研究紀要第97号 「福島県における「学力向上」に関する考察」 -001/156page
福島県における「学力向上」に関する考察
−センター試験結果分析と福島県の中学生の学習に対する意識と行動−
研究の概要
本研究は,福島県の「学力向上」について,センター試験結果分析などから高校生の学力の一端を探り,また中学生の学習に対する意識と行動を「学習一般」「国語」「数学」「英語」の4つの観点から調査することによって,現状と課題をより明確にしていこうとするものである。まず,「福島県の高校生のセンター試験に表れた学力の現状」について分析し,「進路実現を可能とする学力」における問題点を明らかにした。次に,「中学生の学習に対する意識と行動」については,「学習一般」として,中学生の家庭における学習時間,通塾率,予習復習の状況,進路への意識などを分析した。教科における「国語」「数学」「英語」については,教科に対するイメージを分析し,意識として「好き嫌い」や「好き(嫌い)になった学年」「好き(嫌い)な学習内容」「学ぶ目的」などを調査した。学習行動としては,具体的な問題を提示し,実際の学習場面を想起させながら,「解決の仕方」「調べ方」「発展的学習意欲」などを調査した。
その結果,中学校では特に,1年時における「授業」での学習が教科の好き嫌いやその後の学習に大きな影響を与えることなど,さまざまな問題点が明らかにされた。
I 研究の趣旨
1 はじめに
現在,本県においては新しい学力観に立つ「学力向上」が,大きな教育課題の一つになっている。
この問題は,直接的には,近年における本県の高等学校進学率,大学短大などへの上級学校進学率,大学短大合格者数などの低迷がきっかけになっているが,もともと教育目標としての「学力向上」は,公教育の担う本質的な課題であり,進学率などの如何にかかわらず,絶えず求められなければならない性格のものである。そして,ここでいう本質的課題としての「学力」が,学習指導要領の趣旨や新しい学力観,評価観を踏まえたものであることも,言うまでもないことであろう。
本プロジェクトは,平成5年10月に発足し,様々な角度からの調査研究を試みた。本県の高校生の各種テスト結果に見る「学力」についての分析,これまでの本県における取り組みなどについて調査を進めた。それらについては,平成6年6月, 「福島県における高校生の学力について−各種テスト結果からの分析−」9月,「学力向上[目標値シミュレーション]」の二つの中間報告書によって,各種テストに表れた本県の高校生の学力の一端を明らかにした。
また,これらの作業と並行して,本県の中学生の学習に対する意識と行動を明らかにするために,県北地区の中学生を対象として,学習一般,国語,数学,英語の教科などに関するアンケート調査を実施した。これは,センター試験などに明確に表れている本県の高校生の学力不振の背景を探り,中学校段階からの解明を図るものである。
そして,その結果を踏まえて,学力の向上を目指す学習指導法の改善についても,検証授業を実施しながら研究の継続を図った。
言うまでもなく,ぺ一パーテストの結果に表れた学力は真の学力の一部にすぎない。新しい評価の考