研究紀要第99号 「学校不適応児童生徒への援助の在り方に関する研究」 -077/156page
IV 第2年次の研究のまとめ
学校不適応意識や状態の軽減を図ることによって適応意識の高まり,自立的な行動を目指した指導援助の試案を作成し,実証的に研究した結果を以下に述べる。
1 研究の成果
(1) 学校不適応意識・状態の変化
1) 全体的にグラフを見ると,事後調査では学校不適応意識・状態を示す割合が小さくなっており,よい方向への変化といえる。
2) 学校不適応意識の(2-2〜2-10)の8項目のうち6項目で減少していることに注目したい。
なかでも,項目(2-5)「一人の方が気が楽だと思う」,項目(2-6)「友達がいなくてさびしいと思う」など,友人関係にかかわる学校不適応意識が軽減されていることは,試案実践の成果と思われる。(かっこ内の項目はP5の資料1参照)
3) 学校不適応状態(3-1〜3-9)についても減少している項目がみられるが,学校不適応の状態は,生徒個々に違いがあり,その生徒に応じた指導援助が大切なことと考えられる。
4) 項目(3-5)「何をするのもめんどうだと思い,ぼんやりしていることがありますか」については学校不適応の状態が高くなっており,今後の検討が必要である。
(2) 試案実践のまとめ
1) 教師が,生徒一人一人を大事にする声かけをすることで,生徒の心が開き,学校不適応意識や状態が軽減されることが明らかになった。教師と生徒との人間関係づくりが,生徒相互の望ましい人間関係の醸成に役立ったものと考えられる。
2) グループ・エンカウンターを取り入れた演習では,生徒が興味を持ち,楽しく演習に取り組み本音の自分を表出できた。また,このことによって,生徒は多様な価値を見い出し,集団への適応力が高められた。
3) 「ブラインド・ウオーク」や「あいさつ」などの体験的な演習は,対人交流が活発になり,望ましい人間関係の醸成に役立った。
4) SSTの手順を取り入れた「あいさつをしよう」の実践は,社会生活に必要な基本的な技能を身につけ,集団への適応力を高めるのに役立ち,生徒相互の人間関係を醸成することになった。
5) 実践を通して,教師は生徒の個性やよさを生かそうとする内面に目を向けた指導援助の姿勢がみられた。
2 第3年次への課題
学校不適応児童生徒への適切な指導援助のために実証的な研究を進めてきた。今後,校種を広げた研究を考え,さらに効果的な方法を探るために,次のような課題をあげる。
(1) 対象となる児童生徒を適切に把握できる事前・事後調査の内容の充実
(2) 試案の内容,実施方法,時期や期間の検討
(3) 第1年次で調査した6っの価値尺度を取り入れた内面をみる調査の充実