研究紀要第103号 「児童生徒の学校適応への指導援助の在り方に関する研究」 -057/170page
児童生徒の学校適応への指導援助の在り方に関する研究(第1年次)
−一人一人のよさや違いを認め合う学級の人間関係づくり−
研究の要旨
本研究は,平成7年度から,2年計画のプロジェクト研究である。
第1年次の本年度は,小・中・高等学校のそれぞれ2学級を研究協力学級として,「学級における好ましい人間関係づくり」を目指して,次のような研究をした。
1.学級の児童生徒全員を研究対象として,「個人と環境(特に学級の人間関係)との調整」という視点から,アンケート調査と学級担任の観察を通して,児童生徒を,《適応》《順応》《不適応》に分類した。この中から,日頃,なかなか教師の目が届かないと言われる《順応》の児童生徒に焦点を当てて研究を進めた。
2.好ましい人間関係づくりを目指して,構成的グループ・エンカウンターの中から,特に,自己理解,他者理解が深まる演習を取り上げ,校種ごとに発達段階を踏まえるなど,工夫して実践した。
3.《不適応》の児童生徒には,昨年度までの研究成果を生かし,面接相談や声かけなどを意図的に取り入れた。
その結果,《順応》の児童生徒を中心に,自己理解や級友への理解が深まり,さらに,学級への関心も高まり好ましい人間関係が作られた。
I 研究の趣旨
核家族化,少子化など社会全般の傾向を反映して最近の児童生徒は幼少期から人間関係が希薄になりがちである。これが,友達ができない,友情の意味を実感できない,更には,いじめや登校拒否(不登校)などの学校生活に適応できないといった一連の不遭応状態をもたらす大きな要因の一つと考えられる。
また,現在の児童生徒は,希薄な人間関係から孤立感を深めたり,人間関係づくりがうまくいかなかったりするなどして,学校生活に適応できない場合が多くみられる。
このような状況を受けて,昨年度までの研究では学校不適応児童生徒に焦点を当てて指導援助の在り方の実証的な研究を進めてきた。
本年度(平成7年度)からは,昨年度までの研究成果を生かしながら,2年計画で,児童生徒一人一人が学校生活に柔軟に適応できるようにするにはどんな指導援助が有効であるかを研究する。
研究を進めるにあたっては,児童生徒の学枚生活の基盤である学級にポイントを置き,児童生徒一人一人と学級の人的環境(級友や担任)との調整に焦点を当て,主に人問関係づくりの体験(演習)を意図的,計画的に取り入れていくことにする。
II 研究主題についての考え方
1 《適応》《順応》《不適応》の児童生徒のとらえ方 本研究では,学級の児童生徒全員を適応・順応・不適応の3つにグルーピングして研究を進める。
児童生徒は,自己の望ましい姿を目指して成長し'ようとする存在である。その児童生徒が集団生活の中で自らのよさを発見し,高めていくためには,学級という集団との調和を図り,個性や能力を生き生きと発揮できる状態になっていなければならない。
児童生徒がこうした状態を求め,自分を学級に合わせようとしたり,自分に合うように学級そのものに働きかけようとしたりする。この状態を《適応》と