研究紀要第103号 「児童生徒の学校適応への指導援助の在り方に関する研究」 -058/170page

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とらえる。
 しかし,これらがうまくいかずに児童生徒と学級の間に不調和が生じ,何らかの緊張や葛藤が生まれると,様々な問題行動が発生しやすい状態になる。
この状態を《不適応》ととらえる。
 また,一見すると学級と適応が図られているように見えるが,ただ学級に同調している児童生徒もいると考えた。この状態を《順応》ととらえる。

2 指導援助の在り方について
 本研究では,児童生徒が学校生活に適応していくための基盤となる学級の人間関係にポイントをおいて研究を進めた。
 これまでは、「個」すなわち個人への指導援助の在り方に重心がかかりがちで,「環境」との調整という視点からの指導援助が弱かったように思われる。
 そこで,本研究では,「個と環境の調整」という視点から,児童生徒と教師,児童生徒相互の人間関係に焦点を当て,学級への適応を高めていく指導援助の在り方について,実証的に研究していこうと考える。
 なお,指導援助の在り方を追究するにあたっては次の点を考慮した。
(1) 年度別に指導援助の重点を,下図のように設定する。

 [第2年次][よさや違いを認め合える人間関係の育成]

 [第1年次][学級の好ましい人間関係の育成]

 研究の前提 [教師と児童生徒の信頼関係]

 第1年次は,「学級の好ましい人間関係づくり」を重点とする。具体的には,自己理解や他者理解を深わるための指導援助の在り方を追求する。 第2年次は,「学級で互いのよさや違いを認め合える人間関係づくり」を重点とし,具体的には,他者受容や他者とのかかわりができる指導援助の在り方を追究していきたい。
 なお,本研究では,教師と児童生徒の信頼関係を研究の前提条件とする。
(2)演習(体験)を中心に実践する。
 エンカウンターとは,「ホンネとホンネの交流」という意味で,心とこころのふれあいがあり,裏腹のない人間関係を集団体験させることである。こうした集団体験をするための方法には大きく分けて二つある。すなわち,指導者をおかない非構成的グループ・エンカウンターと指導者(担任)が計画を立て,進めていく構成的グループ・エンカウンターである。
 とりわけ,構成的グループ・エンカウンターは,学級のよりよい人間関係づくりに有効であるとされている。
(3)《順応》の児童生徒を中心に指導援助を展開する。
 本研究では,前述した三つのグループの中から,常日ごろ,なかなか教師の目が届きにくいと言われる《順応》の児童生徒を中心に指導援助を展開することにする。
 なお,《不適応》の児童生徒には,構成的グループエンカウンターの他に,面接相談や声かけなどを意図的に取り入れ,指導援助を工夫する。

3 本研究で目指す児童生徒像
 上記の指導援助の在リ方を踏まえ,本研究で目指す児童生徒像を以下のようにとらえ,研究を進めることにする。
《本研究で目指す児童生徒像》
【小学校】
 1. 学級の友達とのかかわりを通して,自分や級友を理解しようとする児童。
 2. 身近な集団の中で,自分の役割に気づき,個性を発揮して活動しようとする児童。
【中学校・高等学校】
 1. 級友とのかかわりを通して,自己理解や他者理解を深めようとする生徒。
 2. 様々な集団の中で,自己の役割をとらえ,


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