研究紀要第104号 「児童生徒の学校適応への指導援助の在り方に関する研究 第1年次」 -096/170page
団を通した指導援助及び連携による指導援助の総合的な指導援助は,児童生徒の再登校に効果的である。特に,不登校期問が短い場合は,大変効果的である。それに対して,不安等情緒混乱と思われるケースの場含は,不登校期間が長期化し,症状が複雑なため,5ヵ月問という期問での再登校は,2人で,大半は再登校というハードルを越すことができない実態であった。しかし,適応指導教室での総合的な指導援助によって,笑顔がみられる表情,大きな声を出しながら行う仲問との交流,家族との触れ合い等,通級当初とは見違える程元気を取り戻す様子がみられるようになった。
IV 適応指導教室の充実のために
1 適応指導教室の位置づけ
学校不適応対策調査研究協力者会議の報告によると,適応指導教室を,「学校以外の場所に登校拒否の児童生徒を集め,その学校生活への復帰を支援するための様々な指導援助を行う場」と位置づけている。すなわち,適応指導教室は,不登校児童生徒の再登校に向けて,家庭と学校との中間ステーションとしての位置にあり,治療・相談,指導の役割を担っている。
適応指導教室は,不登校児童生徒に対して「心の居場所」を提供し,家庭及び学校と連携を図りながら,再登校に向けて,集団生活への適応を図る役割が求められる。
2 適応指導教室の指導援助者に求められるもの
適応指導教室への通級当初,不登校児童生徒は,分離不安,自己像脅威,抑うつ的不安等(P81,不登校児童生徒の心理参照)から,情緒的に不安定になり,物事を冷静に理解できなかったり,判断できなかったりすることが多い。そのような児童生徒に対して,個別によるカウンセリング等で治療・相談的なかかわ})による症状の軽減や解消及び自信の回復に向けた指導援助が必要である。
そして,内面の成長が図られた段階において,行動化に向けて,対人関係の改善,学習意欲の喚起や習慣化への教育的な指導援助が必要である。
適応指導教室において,不登校児童生徒に接する指導援助者は,治療・相談的な児童生徒へのかかわりが求められる面と,教育的な児童生徒へのかかわりが求められる二面があることをふまえておく必要がある。
3 不登校児童生徒の二次的症状への指導援助
不登校児童生徒の中には,いじめ等による心理的外傷性ストレス障害,再登校失敗体験,不登校児童生徒の心理(分離不安,自己像脅威,抑うつ的不安)の無理解等により,不登校が長期化し,生活リズムの乱れ,昼夜逆転,無気力,学力の低下等の二次的症状を示す場合がある。
不登校が長期化したことに伴う,二次的症状への対応として,治療・相談的なかかわりとともに教育的な指導援助による,助言,指示的なかかわり,生活指導,生活訓練等の指導援助の在り方も今後,検討していく必要がある。
4 適応指導教室における社会適応と進路指導
不登校生徒の中には,不登校が長期化したことにより,原籍校への再登校ができず,適応指導教室の指導援助で,中学校の卒業を余儀なくされる場合がある。このような生徒に対して,社会人としての義務と責任の行使に関する意識や就職,進学等の進路に向けた指導援助について,家庭及び学校と連携を図った指導援助の在り方を検討していく必硬がある。
参考文献
・「カウンセリングの理論」國分康孝著 誠信書房
・「学校教育相談の実際」今井五郎著 学事出版
・「学級経営実践マニュアル」手塚郁恵・刀根良典共著 小学館
・「こどもの社会的スキル訓練」J・L・マトソン著(佐藤容子訳) 金剛書房
・「社会的スキル訓練と認知行動療法」坂野雄二著 日本精神技術研究所
・「掌中の玉」名古屋市治療教育相談センター・登校拒否研究会
・「登校拒否児童生徒のための適応指導の在り方に関する調査報告書」富山県適応指導教室推進評議会 平成4年3月
・児童心理(第48巻第!0号)「異年齢間の友だちづくり」塚田亮
・月刊学校教育相談(第8巻第11号)「遊戯療法」平繕美生子
・「教師と生徒の人間づくり」國分康孝著 瀝々社
・「登校拒否タイプ別治療方法の研究」福島県教育センター曜和57年3月
・「先生はカウンセラー」福島県教育センター 平成6年2月