1.来所相談・電話相談
児童生徒が適応指導教室に通級を始め,友だちができて,明るくなった表情,汗だくで遊戯的活動に参加した様子,母親が作ってくれた弁当をおいしく全部食べたこと等,わずかな成長でも伝えたことは,子どもの不登校で混乱している母親の気持ちを支え,失いつつあった養育への自信を回復し,子どもの気持ちの安定に結びつくとともに,保護者との信頼関係づくりに効果的だった。
また,子どもの不登校で,親子や夫婦等の家族関係が危機的状態にある場合が多く,家庭との連携における援助の中で,子どものよさを伝えたり,父親の養育への参加を働きかけたリしたことは,家族一緒の食事の機会を増やしたり,家族旅行が実現したり,進路に関する親子の会話が行われたりする等,家庭の機能の回復を図るうえで効果的だった。
2.グループ・カウンセリング
不登校への理解や対応の在り方を中心にテーマを設けて行った保護者同士によるグループ・カウンセリングでは、母親の参加が多かったが,情緒不安な状態にある子どもへの言葉かけの仕方,父親の養育への参加の必要性等について,集団内相互作用が機能し,不登校の子どもを抱える不安や悩みの軽減,解消に効果的だった。
(2) 学校との連携
適応指導教室では,児童生徒の指導援助に関する共通理解を,学校と図るために,日常の活動の様子から指導援助者がとらえた児童生徒のよさや個性及び成長の状況を報告した。
パソコン操作が巧みである,描画に優れている,バレーボールが上手である,小集団でリーダーシップ性を発揮する等の報告は,学校が新たな視点で児童生徒を理解するうえで効果があったように思われる。
また,学習意欲を持つようになった児童生徒に対して,学校と適応指導教室が連携して,学力補充を行った。適応指導教室は,学習の場を提供し,学校は,学習への取り組み方の助言,学習資料の提供,学習内容の添削等を行った結果,児童生徒と学校との信頼関係を深める効果がみられた。
児童生徒に,再登校への意欲が出てきた段階では,担任との信頼関係づくり,学校の受入れ体制づくり,学校での心の居場所の確保,学力補充の指導に当たるプロジェクトチームの編成,再登校に当たっての保護者の協力等に関する学校と適応指導教室との連携は,児童生徒の円滑な再登校を促進するうえで効果的であった。
(3) 啓発セミナーを通した連携
不登校への理解とその対応の在り方を探るために保護者や学校関係者を対象に実施した「啓発セミナー」では,自ら不登校を体験した講師や現在不登校児を持つ保護者の体験談,臨床経験豊富な講師による講話や助言を傾聴した。それによって,学校に行けないでいる児童生徒の気持ちを温かく受け止める,児童生徒が自分を静かに見つめる時問と場所を確保する,自分で判断する機会を待つ等,基本的な姿勢を確認することができ,大人の役割として,再登校できる環境調整を行うことが重要であることを再認識させられたようであった。
4 適応指導教室における全体の成果
(1) 年度別改善状況
年度別改善状況は,次のとおりである。
年度 |
5年度 |
6年度 |
7年度 |
合計 |
校種 |
小学生 |
中学生 |
計 |
小学生 |
中学生 |
計 |
小学生 |
中学生 |
計 |
登校 |
0 |
1 |
1 |
3 |
4 |
7 |
1 |
1 |
2 |
10 |
相談継続 |
1 |
3 |
4 |
2 |
1 |
3 |
0 |
3 |
3 |
10 |
(2) 不登校期間別改善状況
不登校別改善状況は,次のとおりである。
不登校期間 |
3ヶ月未満 |
3ヶ月以上〜
1年未満 |
1年以上 |
児童生徒数 |
6人 |
8人 |
6人 |
再登校者数 |
6人(100%) |
4人(50%) |
0人(0%) |
上記の改善状況から成果を考察してみたい。年度別改善状況を,不登校の態様別(2「適応指導教室」3年間の研究実践・1.態様別分類による通級児童生徒の実態参照)にみてみると,学校生活に起因すると思われるケースの場合,個別による指導援助,集