平成7年度 研究紀要 Vol.25 個人研究1 -097/170page
読解力を育てる指導の工夫
一三つの要素を持った発言を通して一長期研究員 小 原 吉 雄
研究の要旨
本研究は,文学教材の指導において,児童・生徒が主体となって,読解力を伸ばしていくことができるように指導するには,互いの児童・生徒の読み取り方に気づかせることが重要と考え,話し合いの場での児童・生徒の発言に着目し,次のような研究仮説を立て、小学校と中学校で実践したものである。文学教材の学習において,児童・生徒に,次の三つの要素を持った発言をさせながら,話し合いをしていけば,児童・生徒は,手がかりとなることばのとらえ方に気づき,より多様にことばに渚目することができるであろう。
1.手がかりとなることば 2.読み取ったこと 3.手がかりとなることばのとらえ方
その結果,つぎのような成果を得ることができた。
○ 三つの要素を持った発言をさせたことは,児童・生徒に,自分の「手がかりとなることばのとらえ方」について振り返らせ,それを意識させる上で効果があった。
○ 数多くのことばに着目するようになり,ことばを大切にして読み取っていく意識が高まってきた。
I 研究の趣旨
文学教材の指導を振り返ると,児童・生徒に,根拠となることばをあげさせながら、内容の理解をするように指導しているが,他の文章を読解する際にも,十分に発揮できる技能となるまで,意識して指導していない傾向が見られる。
このような現状から,文学教材の指導論として,「教材を教える」から,「教材で教える」への移行を唱えている実践家も多い。これは,児童・生徒に教材の内容をつかむことばかりに目を向けさせるのではなく,教材を読解していく際の具体的な技能を身に付けさせ,他の文章を読解する際にも,十分に発揮できる力にしていこうとする立場と考える。私自身も,このような考え方に立ち,指導していくことが大切と考える。
そこで,本研究では,児童・生徒が主体となって,他の文章を読解する際にも,十分に発揮できる技能を身に付けることができるように,文学教材の指導の工夫を考え,その工夫を実践を通して検証していく。
II 研究の内容・方法
1 研究の内容
読解するときには,ことばを手がかりにして内容をとらえていく。例えば,説明的文章を読解するときには,論理的な説明を理解するために,指示語や接続語,文末表現などのことばを手がかりにしていく。文学的文章を読解するときには,説明的文章以上に,ことばを手がかりとしていくものがある。これは,文学的文章のことばが,意味内容を指し示すためばかりでなく,表現効果もねらって書かれているからである。このように,読解の手がかりにしていくことばは,多様にある。
そこで,読解力を育てていくためには,多様にある「手がかりとなることば」に着目することができるようにしていくことが必要である。
具体的に,例をあげて考えてみる。次の詩は,「虹の足」(吉野弘)の一部である。