平成7年度 研究紀要 Vol.25 個人研究1 -098/170page
行手に榛名山が見えたころ
山路を登るバスの中で見たのだ,虹の足を。
児童・生徒に,この部分から読み取ったことについて発言させた場合,「作者は,とても感激している。」と答えるだろう。
しかし,こうした読み取りだけで進めば,内容理解だけの学習になってしまう。
叙述を根拠とした学習にするためには,どこからわかったかを教師は問う。児童・生徒は,「山路を登るバスの中で見たのだ,虹の足を。」と答えるであろう。これで学習を進めていけば,根拠となることばをおさえた学習になるが,その教材のみの学習になってしまう。
他の文章をも読解する力を育てるためには,この読み取りに至った経緯を考えてみる必要がある。この読み取りに至るまでには,手がかりにしたことばとして,「だ」,「文の構成」を見出し,これらのことばを,
・「だ」→強く言い切っている
・「文の構成」→反対になっている
ととらえていると考えられる。
このように,読み取るときには,「手がかりとなることば」とその「ことばのとらえ方」をもとに読み取りを行っている。
そこで,児童・生徒に「手がかりとなることば」とその「とらえ方」も含めて発言させ,話し合いで交流したり検討したりすれば,読み取り方について互いに気づき,読解力が育っていくと考える。
以上から,研究仮説を次のように考えた。
〈研究仮説〉
文学教材の学習において,児童・生徒に,次の三つの要素を持った発言をさせながら,話し合いをしていけば,児童・生徒は,手がかりとなることばのとらえ方に気づき,より多様にことばに着目することができるであろう。
1.手がかりとなることば(A)
2.読み取ったこと(B)
3.手がかりとなることばのとらえ方(C)
これを図に示すと,次の図のようになる。 * ただし,「『いやがっていた』とあるから嫌いだったと思う」など,そのまま言い換えている場合などでは,Cの部分がいらないので,その際は無理して入れないようにする。
2 研究の方法
小学校と中学校で,検証授業を行い,研究仮説が有効かを検証していく。初めに,読み取った経緯を言葉で表現することが比較的容易と考えられる中学校の生徒を対象にし,表現の含意性が高い詩教材を取り上げて実践する。次に,中学校での検証授業の結果を踏まえ,小学校の児童を対象に,教材数の多い物語教材を取り上げて実践していく。なお,本研究の考え方を実践していくには,継続した学習の積み重ねが必要であるが,本研究では,この考え方による実践の導入に焦点をあて,検証授業では,それぞれ一単元または小単元の授業を通して検証していく。
III 研究の実際と考察
《検証授業1》
1 検証授業1の構想
(1) 授業者福島市立福島第二中学校教諭 坂口みどり先生
(2) 対象生徒 同1年1組30名
(3) 単元名 命ということ
(4) 教材名「木琴」金井 直 (光村図書1年)
(5) 具体的な研究仮説の手だて
生徒自身が,三つの要素を理解して,読み取り,発言することができるようにするために,次のような具体的な手だてを立てた。
1. 三つの要素の表現の具体化
生徒には,次のように表現を変えて示す。