平成7年度 研究紀要 Vol.25 個人研究7 -166/170page

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きた」の両方の項目で,半数以上の子ども達が4点満点を付けている。さらに,3.7以上の子どもを合わせるとラいずれの項目においても8割以上の子ども達が高い評価を下している。このことから,このムーブメント学習は,子どもたちにとって楽しい学習だったと推察できる。
 また,運動能力の育成の観点から考察を加えると(個々の運動属性の伸びについては,すでに述べてきた)学級全体の特微としてみた場合,比較的苦手にしていた運動属性がどう変わったかについては,次のグラフのようになる。

12.MSTBの学級平均(%)
12.MSTBの学級平均(%)

 学習後の検査場所が多少滑りやすかったことが影響して,「椅子での腕立て伏せ」はわずかに下がっているものの,「起き上がり」,「歩行板」での得点が学級全体でともに5点ずつ伸びていることを考えると,学級全体の運動能力向上のために効果があったと見てよいだろう。
 以上のことから「楽しい体育」を求めつつ,しかも運動能力の育成に役立ったものと考えられる。

IV 研究の成果と課題

1 研究の成果
(1) 個に応じた手だてが明らかになったこと

 個に応じた指導においては,第1に,子どもの発達段階に応じた運動能力の実態を,運動属性の面から的確に把握することである。第2は,運動に対する願いや希望を生かし,多様な活動を展開することである。この2つのことは,意欲を高め,運動能力向上に効果的に働くことが分かった。
(2) 運動能力は動くことを学ぶなかで育つことが明らかになったこと
 低学年においては,目的的な遊びを通して,創造性を働かせ,意欲的に取り組む中で,子どもは知らず知らずのうちに運動能力を身に付けていくことが明らかになった。
(3) 運動の能力育成のための単元の組み方が明らかになったこと
 この実践では,2時間の内容を6単位時間に分けて扱った。1種目あたり5分間という短時間でも,意図的・計画的に取り上げることによって,着実に運動能力の向上が図れることがわかった。
(4) スポーツテスト活用法が明らかになったこと
今回の実践では,苦手な運動属性について1種目だけ,単元終了後に再度測定したことに意味があったと考える。スポーツテストにおいても,この方法を活用するならば,子どもの伸びを短時問で,しかも容易に捉えることができるであろう。
 2 今後の課題
(1) MSTBの活用及びムーブメント教育の広がりについてさらに研究を深めていきたい。
(2) 「楽しい体育」と運動能力の育成の接点をさらに探っていきたい。

 終わりに,本研究を進めるに当たって,「ムーブメント教育」の実践にご協力をいただいた,福島大学教育学部附属小学校の校長先生,大内剛先生並びに体育部の先生方に厚く御礼申し上げます。

〈参考文献〉
1) 子どものためのムーブメント教育プログラム(小林芳文・是枝喜代治) 大修館書店
2) 子どもの発達と運動教育(著者J・ウィニック,訳者小林芳文・永松裕希・七木田敦・宮原資英) 大修館書店
3) 横浜国立大学教育紀要 第29集 P349〜377 (小林一Kiphard BCT (The Body Coordinsion Test)の開発 (小林芳文・富島茂登・安藤正紀・緒方千加子)ムーブメント教育による自閉症児の臨床的研究 (木村幸恵・小林芳文)
4) 「小林一フロスティッグムーブメントスキルテストバッテリー」 手引 (日本文化科学社)
5) 小学校・中学校体育教育 (中森敦郎・長澤光雄・久保健) 中央法規出版
6) 学校体育1994,10「特集学校体育は体力をどう保障するのか」 (日本体育社)
7) 体育科教育1995,10「特集子どもの体力を考える」 (大修館書店)


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