研究紀要第105号 「学力向上に関する調査研究」 -001/175page
学力向上に関する調査研究
「学力到達度調査」に関わるテストの結果分析と考察
研究の要旨 平成5年10月に「学力向上調査研究プロジェクト」を発足させ,学力向上に資するよう,さまざまな研究を進めてきたところである。本研究は,昨年度実施した「学力到達度調査事業」注の結果を踏まえて学力到達度調査に関わるテストを作成し,その答案分析をすることで,児童生徒がどの段階で,どのようなつまずきをしているのかを探ろうとしたものである。 その結果,これまで漠然と推測されていたつまずきの内容が明確になったり,全く予想もしていなかったつまずきが明らかになったりすなど,貴重な成果を得ることができた。 ここでは,報告書としてまとめた中から,その一部を紹介する。
注 「学力到達度調査事業」:県内の小学校6年生,中学校3年生を対象に,児童生徒の学力の到達状況を把握するために教研式・全国標準診断的学力検査を実施した。小学校は5年の内容で国語,算数について,中学校は2年の内容で国語,数学,英語について各教科1,500人を対象に実施した。その調査の結果,調査教科における到達不十分な領域や項目,課題が明らかになり,その成果を報告書としてまとめた。 T 研究の概要
1 研究の趣旨
平成7年度に,本教育センターでは「学力到達度調査事業」を実施し,県内の小学生,中学生の学力を教研式・全国標準診断的学力検査(以下NRTという)で把握した。小学校5年の国語,算数,中学校2年の国語,数学,英語それぞれの調査教科の学習内容の到達度状況が把握でき,到達不十分な領域や項目,課題が明らかになった。
本研究は,7年度の研究を踏まえて,「学力到達度調査」に関わるテストを実施し,その答案分析をすることにより児童生徒のつまずきを探り,問題点等をより具体的に把握し,学力向上に役立てようとするものである。
2 「学力到達度調査」に関わるテストの概要
(1)「問題作成の視点」については,NRTにおける大領域・中領域・小問の全国比から明らかになった本県児童生徒の学力到達度の低い領域等を精選し,教科の特性や問題の量等に配慮しながら,作成した。
(2)「問題内容」については,精選した領域等に基づいて問題を作成したが,問題によってはNRTの問題をそのまま用いたり,部分的に変えたりして,比較,検討しやすいようにした。また,児童生徒のテストに対する意欲に配慮し,易しい問題も織りまぜた。
(3)「問題形式」については,NRTは全問とも選択肢形式であるが,本テストでは答案用紙に記述させる部分を増やしたり,選択肢の工夫によって児童生徒の学力の到達の段階や状況がより細かに把握できるように工夫した。
(4)テストの時間については,35分程度に設定し,時間が足りなくてできなかったということがないように,問題の質,量に配慮した。
(5)テストの対象学年及び教科については,小学校は県北地区の4校に依頼し,6年生を対象に5年の内容で国語,算数を,中学校は県北地区の4校に依頼し,3年生を対象に2年の内容で国語,数学,英語を実施した。時期は平成8年11月28日〜12月3日である。
II 教科別調査研究の実際
本年度の研究は『「学力到達度調査」に関わるテストの結果分析と考察』という報告書としてまとめたが,ここでは小学校,中学校の各教科からそれぞれ大問の1つを取り上げ,調査結果の集計及び分析,考察と対応について紹介する。