研究紀要第105号 「学力向上に関する調査研究」 -016/175page
小 問 解 答 分 類 解答率(%) 分 析 正答 誤答 (2) 駅までの距離を求めて・・・・・ 21.2 3.0 「対応関係」をもとに立式した生徒は3.0%である。このことは「関数的な見方・考え方」を問題解決に適用しようとする生徒が少数であることを示している。
「比例と認識」の31.3%は,y=75x,y=−75x などと答えた生徒である。(1)をもとにしているが,「歩いた距離」と「駅までの距離」を混同したこと,あるいはもともと「比例関係」にだけに注目していることなどが原因と考えられる。対応関係より 3.0 0 比例と認識 / 31.3 その他 0 14.1 無解答 / 27.4 計 24.2 75.8 3. 考察と対応
(1)では,正誤は別にして70%を超える生徒が問題状況を読みとり,時間と距離,速さの関係を用いて解答をしている。時間と距離,速さの関係を用いながら正答に至らなかった生徒は,ここで用いる「距離」が移動距離であることが理解できていない生徒で,「速さ」の意味をきちんと押さえて指導する必要があると思われる。
一方,(2)は,対応表から1次関数の式を求める大問2と問題の構造上は同じものということができるが,大問2よりも正答率で20ポイント低い。このことは学習した関数的な見方・考え方を具体的な場面で適用できないことを示しているものと思われる。
事象の中の変化をとらえる一般的な考え方としては,変化の様子を対応表の形に整理して考察する,あるいはグラフに表してみる,などの手だてをもってその傾向を読みとり,その後に式化などの一般化を図っていくことが多い。したがって対応表,グラフのよみとりは関数学習を進めていくために欠くことができないものであるといえる。
自然科学や社会科学などでは,動的なものをとらえる手段として,問題場面を対応表の形で整理してみる,あるいはグラフに表してその傾向性をよみとり,その上で式化などの一般化を図る手法が日常的に用いられている。こうしたことを考慮し,「関数的な見方・考え方」が生かされるよう具体的な問題場面で指導していく必要があると思われる。
「分析」で述べたように,対応表に整理して考えた生徒は少数で,具体的な場面から直接式化を試みる解答がほとんどである。そのため,問題場面を適切に整理できず,解答困難に陥っている生徒も少なくない。
そこで,関数学習を始めるに当たって,たとえば「プールに水を張る際の満水時刻の予測をするためには,どうすればよいか。」などのような具体的な適用場面からの導入を考えたい。この場合であれば,「どのようなデータが必要か」「そのデータをどのように整理するか」「整理したデータからどのようなことがよみとれるか」などを考えることにつながり,対応表に整理することのよさや対応表のよみとり方,グラフ表示の意味などの課題を解決していく過程で,必要感を伴って身に付けさせることができる。また,こうした学習を展開することによって,関数的な見方・考え方を事象考察に積極的に活用していこうとする態度を身に付けさせることもできると思われる。