研究紀要第105号 「学力向上に関する調査研究」 -020/175page
それによって,生徒は英語独特の言い回しや文構造に慣れ,表現する際に使える語や連語,文型などの量を増やしていくのである。文の一部や,表現の一部を書き並べることはできるが文全体になるとわからなくなってしまう生徒も,部分的な理解を全体まで浸透させることができるようになるのである。
イ ゲームやクイズを活用する
語や連語,文型などを定着させる指導としては,単なる和訳や文型練習にとどまることなく,それらの文型や文法事項が実際のコミュニケーションに役立つことを理解させた上で,ゲームやクイズを効果的に活用した指導が大切である。それによって,英語という言葉が何らかの意味を表現するために使われ,自分のメッセージを送ったり,相手のメッセージを受け取るために使われるのだということを実感させることができるのである。
III まとめ
テストを実施した結果,本県の生徒がどの段階で,どのようなつまずきをしているのか,明らかにすることができた。教科別にいくつか取り上げて述べてみたい。
1 小学校国語,中学校国語
(1) 小学校,中学校ともに「漢字の読み書き」では混同しやすい漢字の読みや,同訓異字・同音異義語を持つ漢字等の書きに誤答が多く見られた。字形が正確でないものも少なくなかった。指導にあたっては漢字の意味だけでなく,必要に応じて語源,語法等にも触れ,漢字に対する興味や関心を喚起したりしながら,定着を図ることが大切である。
(2) 小学校における「文章の主題や要旨を読む」,中学校における「論理的な構成や展開の理解」では段落の要点の理解が十分でなかった。語や語句の意味は言うまでもなく,指示語の内容や,文脈における語(句)の意味など,「修飾・被修飾」「活用の種類」「活用形」等,文法用語の意味の理解も含めて,きめ細かな指導が望まれる。
2 小学校算数,中学校数学
(1) 算数における「整数・小数の乗除,分数の加減計算」,「数と計算」では繰り上がりや小数点の処理の仕方,分数の加減の計算方法等の定着が十分でなかった。また,算数における「文字を用いた式」や数学における「基本的な計算力」では計算のきまりや,符号等の処理の仕方に不十分なところがみられた。計算の基本的なきまりや処理の仕方,検算の仕方等も含めて,指導の改善・工夫が求められる。
(2) 算数「量と測定」,数学「1次関数」については基本的な概念や,語句の理解を深めるとともに,体験的に単位の大きさ,長さ,量等の感覚をとらえさせる等,指導の改善・工夫が求められる。
3 中学校英語
(1) 「語順を考えて適切な英文を書くこと」では,文の中の一部についてはできているが,文全体となると,十分定着していなかったり,また「聞き取って適切に答えること」では「答え方」がわからずに誤答となっている場合が多い。全体の中から部分の定着を図ったり,あるいは部分の定着を図りながら,全体へと発展させたりする等の工夫が必要である。
(2) 「読みとり」では単語の意味を手がかりに,文章の理解を進めていることがうかがえるが,わからない単語に出あうと,話の流れについていけなくなる傾向がみられる。単語や語句単位だけでなく,文章の概要に目を向けながら読みの理解を図る指導が必要である。
調査対象の各教科について,対応や指導の視点にも触れながら報告書としてまとめたが,具体的に授業をどう改善するか,あるいは授業をどう造り上げるかは児童生徒の教育に携わる教師一人ひとりの課題である。本研究は児童生徒の誤答やつまずきに焦点をあてたが,指導にあたっては,誤答やつまずきだけに目を向けることなく,正答にも目を向けながら,幅広い視野からバランスのとれた指導を考慮しなければならない。本研究が児童生徒の学力向上のために基礎資料となり,指導の改善,工夫,授業の創造に資するよう活用されることを願うものである。