研究紀要第107号 「基礎学力向上のための情意面の活性化」 -031/175page

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基礎学力向上のための情意面の活性化

科学技術教育部

研究の要旨
本研究は,学力の認知面と情意面のかかわりに着目し,思考を情意面から認知面への橋渡しをする活動ととらえ,情意面を活性化し,思考を促す指導や支援が知識・理解,技能の獲得にどのように有効であるかを調べることをねらいとして,理科と技術・家庭で授業実践を行ったものである。
実践の結果,次のようなことがわかった。
1. 児童・生徒の支援要求傾向を把握することで,具体的指導に当たって,教師が配慮すべき点が明らかになった。
2. 児童・生徒の期待に配慮した支援や具体的方策を講じることによって,関心,意欲が持続した。
3. 教師の支援や具体的方策によって,思考を促し,思考活動を活発にすることができた。
4. 情意面を活性化して思考を促す方策は,児童・生徒の知識・理解,技能の獲得に有効であった。

I 研究の趣旨

新しい学力観に立つ学力の育成では,知識・理解などの認知面だけでなく,関心・意欲などの情意面をも含めて学力ととらえている。学力には情意的側面と認知的側面があり,学力が向上するときにはこの両者が相互に作用し合って高まっていくものと考えられる。しかし,情意面,認知面,それぞれの重要性は認識されていながら,実際の指導では一方にのみ教師の意識が働いてしまっている傾向がある。

本研究は,学力の認知面と情意面のかかわりを重視し,思考を情意面から認知面への橋渡しをする活動ととらえ,情意面を活性化し思考を促す方策を盛り込んだ授業を展開することによって,思考活動を活発にし,児童・生徒の知識・理解,技能を確かなものとする実践研究である。研究は理科と技術・家庭で行った。

II 研究のねらい

児童・生徒の情意面を活性化させ,思考活動を活発にする指導や支援が,知識・理解,技能の獲得にどのように有効であるかを調べること。

III 研究の基本となる考え方

1 基礎学力の向上

学力とは,児童・生徒一人一人が将来,社会において,自ら考え自ら学び,社会の変化に主体的に対応していくのに必要となる,「関心・意欲・態度」「思考・判断」「技能・表現」「知識・理解」などの資質や能力と大きくとらえることができる。

学校では,これらの資質や能力の基礎を培うことになるが,具体的な学習指導では,知識・理解や技能が基盤として位置付けられることから,本研究では,基礎学力を「児童・生徒が獲得した基礎的・基本的な知識・理解や技能であり,それらをその後の学習の中で活用し得る力」 注1) ととらえた。したがって,基礎学力の向上を図る学習指導では,学習内容についての関心や学習に対する意欲を高め,それらを持続させながら,思考力や判断力,表現力を働かせる過程を経て,児童・生徒が自ら主体的に知識・理解,技能を獲得できるような授業を進めていくことが大切である。

 

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