研究紀要第107号 「基礎学力向上のための情意面の活性化」 -032/175page
2 支援要求傾向
児童・生徒が学習するとき,誰もが,「もっと知りたい」「自分で解決したい」などといった目標を基本的欲求としてもっている。そのため,それら児童・生徒の期待に応えるような教師の支援が学習意欲を引き出す上で効果的に働く。学習目標の達成に向けて児童・生徒が教師に支援を求める傾向を事前にとらえておくことは,具体的指導を行うに当たって必要なことである。このような考えから本研究では,学習の過程で児童・生徒が教師に援助を求める傾向を「支援要求傾向」と名付け,児童・生徒の自己評価によって数量的に把握し,それを指導に生かすことにした。
3 情意面の活性化
基礎学力の向上をめざした学習指導は,情意面と認知面のかかわりに配慮して展開していくことが大切である。
いま,学習の過程を単純化し,下図のような階段のモデルで考えてみる。この階段は,情意面と認知面が交互につながった階段である。このモデルは基礎となる知識・理解や技能をもった学習者が,ある事象に関心をもち課題を見つけ,自らのエネルギーを使って課題解決に向けて意欲的に取り組み,思考の段階を経て,新たな知識・理解,技能を獲得していくということを示している。態度の段階は特に明示しなかったが,関心から意欲,思考へと自ら登ろうとする姿勢があることが,態度が身に付いていることと考える。
階段の各ステップの段差が大きいと次の段へ進むことが困難になる。このようなときは段差を小さくするために補助的な踏み台を置いて上の段へ登りやすくしてやればよい。この踏み台に相当するのが教師の行う指導であり支援であると考える。これによって,児童・生徒の,もっと上へ登ろうとする気持ちが高まる。このことが情意面が活性化するということである。児童・生徒の情意面の活性化に働くような教師の指導や支援が,知識・理解,技能の獲得の前提として必要である。
学習意欲はあっても,それがなかなか学力に結び付かないという例をよく聞く。やる気はあっても実際にやらないと身に付かない。やるということには,解決方法を考える,問題を解く,観察や実験を行う,作業をする,など,様々な形態があるが,それらの根底にあるのは「考える」という活動である。自分から進んで考えるという過程を経て課題解決に至らせることが,生きた知識の獲得につながる。ここに,意欲から思考へと,主体的な思考活動を促す教師の指導や支援が必要になってくる。
従来から,「関心・意欲を高める指導」というような情意面に重点をおいた研究,「思考力を育成する指導」というような認知面に重点をおいた研究は多くなされているが,両者を結んで総合的にとらえた実践研究は少ない。本研究では,思考を情意面から認知面への橋渡しをする活動としてとらえ,知識・理解,技能の獲得のためには思考することが必要であり,また,思考活動を続けることによって意欲が低下しないようにするには,関心,意欲を持続させる方策が必要であるという考えから授業実践を行った。実践は理科と技術・家庭で行い,思考につい