研究紀要第111号 「福島県の児童生徒の学力の到達状況に関する研究」 -044/166page
(4) 授業改善に向けて
これからの国語科の授業では,生徒―人―人が体験や思考と結びついた言葉を通して,発表したり相手の意図を理解したりする力をつけることが重要である。そのためには,作文や話すこと・聞くことといった表現活動の場を重視し,個に応じて言語事項の定着を図る指導が必要である。
今回の調査では,以下の3つの中領域が全国比90を下回った。特に,国語科の基礎となる言語事項である「単語の活用の理解」と「語句についての知識・理解」が,十分身に付いていないことが明らかになった。
「文法や語句についての学習においては,生徒の言語事項に対する関心を生かし,表現や理解に役立つ力をつける授業の工夫が大切と考える。そのためには,単元の指導計画を見直し,授業のどの場面で漢字や文法の力をつけるのかを把握するとともに,個別指導などを工夫し生徒―人―人の力を伸ばす指導が必要である。
ここでは,「単語の活用の理解」の中領域から,全国比が低い小問を例にとり,考察し その領域に関する指導の要点について述べる。
単語の活用の理解 (84)(大領域「言語事項I」) 語句についての知識・理解 (85)(大領域「言語事項II)
ものの見方や考え方・心情の理解 (89)(大領域「理解」)
1)小問例
次の文章を読んで,あとの問にこたえなさい。
(※ 文章省略)1(1) 恐ろしい ,(2) 言っ ,(3) 使わ の
2(1) 分かり ,(2) 見る ,(3) あっ ,(5) できる の動詞の活用の種類を,
用言を,それぞれ次の中から選びなさい。
ア 未然形 イ 連用形 ウ 終止形
エ 連体形 オ 仮定形 カ 命令形
それぞれ次の中から選びなさい。
(同じ物を何回選んでも良い。)
ア 五段 イ 上一段 ウ 下一段
エ カ行変格 オ サ行変格
小問 平成7年度
全国比平成9年度
全国比1
(1)
79
83
(2)
74
74
(3)
84
79
2
(1)
91
87
(2)
88
83
(3)
91
89
(4)
88
88
(5)
90
83
考察
小問lは用言の活用形を答える問題である。「言っ」は「言う」の連用形であるが,「た」が接続すると音便化するという知識が不足しているため,全国比が低かったと考えられる。小問2は動詞の活用の種類を答える問題である。前回と比べて,(4)を除き,すべての全国比が低下している。
上の2つの,小問には, 「活用形を選ぶ」,「活用の種類を選ぶ」という分が出てくる。
[資料1]は,この問題に関連して調査したものである。この資料によると,小問1,2の解答分類から分かるように,「活用形」を問われているのに「活用の種類」を答えたり,「活用の種類」について問われているのに「活用形」を答えたりしている生徒は,ともに21.3%である。また,小問1,小問2の「無解答」は,それぞれ26.9%,28.0%であり,