平成9年度 研究紀要 Vol.27 個人研究 -131/166page

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という感触を得た。

また,検証の過程で,当初には意図していなかった多くのことも明らかになった。研究の成果は次のとおりである。

1 研究の成果

(1)フリーカード法が,授業観察者の授業観察の視点獲得のために有効であり,観察者の授業評価の力量を高める作用があることを確認することができた。

(2)フリーカード法を用いた授業研究会が,参加者の意識の高揚に有効であり,研究協議会の活性化につながることが明らかになった。

(3)フリーカード法を用いた授業研究会を繰り返すことにより,教師の授業観祭の視点が,個々の授業技術から授業スキルに変わっていくことが分かった。

(4)フリーカード法のメリット,デメリットを明らかにし,それらを踏まえた研究目的別バリエーションをまとめることができた。

(5)教職経験年数10年までの教師とそれ以上の教師との間には,同じ授業を観察していてもカ―ドの記述内容に違いがあることを確認することができた。

(6)経験の浅い教師の,授業観察の視点の広がりの様子を,模式的ながら確認できた。

(7)「(5)(6)」の知見が得られることから,本研究で用いた手法(記述されたフリーカードの分析研究)が経験の浅い教師のカ量形成過程研究の―手段となり得ることが確認できた。

2 今後の課題

(1)研究の妥当性を高めること

本研究では様々な制約があって条件に不備な点、が見られる。例えば,未経験者群として研究に協力していただいた中・高教育方法実践講座参加者が中学校,高等学校の教師であるのに対し,比較の対象の研究協力校が小学校であったこと,また授業研究の対象とした授業も異なること,さらには調査対象人数も十分ではないなど,研究の妥当性という点からは信頼性に欠ける面が見られる。条件をそろえて,再調査する必要がある。

(2)研究の手法を教員研修プログラム開発に活用 すること

本研究で用いた手法は,フリーカードの記述内容を経験年数ごとに詳細に分析検討することによって,教師の力量形成過程研究の―方法とすることができる。このことを実現するためには,調査対象を条件の許す限り広げ,かつ長期間の継続研究とすることで,得られる知見の―般性を高めていくことが必要である。

こうした研究の過程で得られる知見は,教師のライフサイクルに応じた研修課題の設定や初任者研修等,教員研修プログラムの作成に多くの示唆を与えてくれるものと考える。

本研究を進めるにあたりご協方をいただいた東和町立木幡第二小学校,会津若松市立湊中学校,大戸中学校,さらに福島市立瀬上小学校の校長先生をはじめ,職員の方々,また調査研究に快くご協カいただいた平成9年度福島県教育センター中・高教育方法実践講座に参加された先生方に心から厚く御礼申し上げます。


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