研究紀要第115号 「「生きる力」としての「学力」を育てる学校教育の創造」 -001/117page

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「生きるカ」としての「学カ」を育てる学校教育の創造

〜小・中・高における授業の改造〜

研 究 推 進 委 員 会

本研究では,教育の現状やその背景に考察を加え,「生きる力」を研究課題の中心に据えた理由を論述すると共に,「生きる力」としての「学力」を育てるための具体的な方策を探っている。
「生きる力」を「人間として意昧深く生きる力」であると捉えると共に,「『生きる力』としての『学力』」を育むためには,「生きようとするカ(生きる目標)」「活かす力(自己改革)」「共に生きる力(自己実現)」を総合的に育てることであると考えた。こうした力を育てるために,「意欲を持つ」,「自分で考える」,「他と共に学ぶ」という視点から授業の改造を探ってきた。
さらに,「教師の改造」,「教材の改造」,「学級の改造」,そしてそれらを基盤とした「授業の改造」という4つの視点から,研究主題を設定して具体的な研究実践を進めてきた。

I 研究の趣旨

第15期中央教育審議会は,「21世紀を展望した我が国の教育の在り方」について答申し,ゆとりと生きる力をキーワードにして,「ゆとりの中で生きる力を育んでいくこと」を提言している。

こうした「生きる力」を核とする教育改革の動きは,子どもたちの生活の現状や激変する今後の社会への対応など,学校教育が解決しなけれぱならない様々な背景から生まれてきた。従って,知・徳・体の調和のとれた全人的な力としての「生きる力」の育成は,これからの学校教育における中心的な課題になるものと考える。「生きる力」については,次のように述べられている。

・自分で課題を見つけ,自ら学び,自ら考え,主体的に判断し,行動し,よりよく問題を解決する資質や能力
・自らを律しつつ,他人とともに協調し,他人を思いやる心や感動する心など,豊かな人間性
・たくましく生きるための健康や体力

そこで,「生きる力」としての問題解決力,豊かな人間性,そして,たくましく生きるための健康や体力,この3つを総合的に育むための学校教育の在り方を模索すると共に,「生きる力」としての「学力」を育成するための小学校・中学校・高等学校の授業改造の具体的な方策を明らかにするために,本研究課題とサプテーマを設定した。

II 研究課題設定の背景と「生きる力」

研究課題である「『生きる力』としての『学力』を育てる学校教育の創造」は,今日の学校教育が抱えている深刻な諸問題の解決を目指し,先行き不透明な時代に子どもたちがなお,明るくたくましく生きていけるような力を育てる学校教育のあるべき姿を求めて設定した。

つまり,学校教育の今日的課題を研究の動機として,「『生きる力』としての『学力』」を育てるための方策を探るものである。

「生きる力」を問題にしなければならない研究課題設定の背景を次のように捉えた。

1 子どもたちの生活の現状

子どもたちの中にはゆとりのない忙しい生活を送っているものも少なくない。また,生活体験や自然体験等の直接体験が減り,疑似体験や間接体験が増える傾向がある。さらに,自立の遅れ,倫理観の欠如,体力や運動能力の衰え等も指摘されている。


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