研究紀要第115号 「「生きる力」としての「学力」を育てる学校教育の創造」 -004/117page
のは,教師の意識改革と研修であるとの視点から,「学校の活性化を目指した教員研修」,そのうち特に,校内研修についての「望ましい在り方と管理職の関わり方」を提言している。
校内研修の活性化が,教師の力量を形成し,その実践的指導力が授業を変え,学校を変えていくという理論の流れを明らかにしている。また,こうした流れをコントロールしていく管理職のリーダーシップの重要性を示している。
(2) 教材の改造
生きる力を育てていくための教材については,特に情報リテラシー,情報活用の実践力の育成という視点に限定し,「コンピュータソフト教材」に関する研究をした。今年度は,データの追加・変更のできるソフトウェア教材を開発し,教材の柔軟性を高める工夫をしている。また,別の教科にも応用できるシステムの開発.情報ネットワークの教育的活用等の研究も推進してきた。
(3) 学級の改造
生きる力の基盤となる「人間関係をつくる力」に焦点を当て,「学級の人間関係を改造する」研究に取り組んできた。今年度は,教育相談の理念や手法にとどまらず,いくつかの学校・学級の協力を得て具体的な授業実践を通して,学級における人間関係づくりの在り方について考察を加えている。
お互いを受け入れ,支え合える豊かな人間関係を育むことが子どもの自己実現に有効であることが明らかになってきている。
(4) 授業の改造
「小・中・高における授業の改造」に向けての研究の視点のうち,授業そのものの改造については,学力を育てる側面からの「学力向上のための授業改善に関する調査実践研究」と,思考活動を活発にする工夫・改善を通した「基礎学力向上のための授業改善に関する実践的研究」との2つの研究主題により研究に取り組んでいる。
1. 学力を育てる
学力到達度調査を基にして,学力を正面から取り上げ,到達度の実態に応じて,国語,算数・数学,英語について各領域・分野ごとに,指導方法改善のための教材・教具の開発や学力向上に向けた具体的な指導の事例を提案している。
また,体育,保健体育,生活,音楽などの「評価の数量化」が難しい教科で,「生きる力」としての「学力」の育成を,「学ぼうとする力」,「学ぶ力」,「学んで得た力」との関係から,授業改善・改造への取り組みと結び付けて研究実践を進めている。
2. 基礎学カと思考力
「生きる力」としての「学力」を育むための原動力である授業の改造に向けて,思考力を高め,基礎学力の向上を図るために,観察・実験,実習の工夫・改善をくり返し実践的に検証しようとしている。
そして,思考力を高めるため,思考活助を活発にする様々な手立てを講じて研究に取り組んだ。特に,思考活動を活発にする観察・実験,実習の教材を開発し,有効な活用の工夫を実践的に検証している。また,観察・実験,実習をどのように展開すれば思考活動を活発にし,基礎学力の向上を図ることができるかについて探っている。
IV 研究の成果と今後の課題
1 研究の成果
(1) 研究課題を設定し,「『生きる力』としての『学力』」や「授業の改造」等に関する考え方をまとめ,共同研究の方向性を確立することができた。
(2) 教師の改造,教材の改造,学級の改造,授業の改造という4つの視点を設定したことは研究課題を解明するために有効であることが確認できた。
(3) 研究課題や研究主題を解明するために個人研究の充実が図られ,「授業の改造」に向けた実践的な研究がみられるようになった。
2 今後の課題
(1)「『生きる力』としての『学力』を育てる学校教育」の在り方についてさらに研究を深めて,具体的で有効な提言ができるようにする。
(2)「授業の改造」にかかる研究主題に基づく研究を一層進め,研究課題との関わりを考慮しながら,「授業の改造」の具体的な提案や実践事例の提供をしていきたい。