研究紀要第118号 「基礎学力向上のための授業改善に関する実践的研究」 -061/117page
1. 導通試験練習装置を活用した実習
グループ内で,結線し問題を出す生徒と回路計で導通を確認する生徒に分かれ実習を行い,回路計の基本的な操作技能を習得した。
2. 電圧測定確認装置を活用した実習
「直列回路よりも並列回路が明るい」「直列回路ではワット数の高い方が暗い」という予想に反する現象の原因を,生徒は推論した後,回路計で電圧を測定し,明るさの違いを電圧と関連付けて数量的に把握した。
3. 故障発見練習装置を活用した実習
実習前に考えられる故障の原因を話し合った。グループごとに予想に基づき,回路計で点検・測定し,故障の原因を分析的に判断した。
4. アイロン故障発見装置を活用した実習
順番に従い,1人ずつ回路計を操作して測定した。測定結果について,グループ全員で考えを出し合い,総合的に判断して,故障原因をつきとめた。
4 結果と考察
(1) 実習装置の活用と思考活動との関係
実習装置の活用に対する生徒の評価は,次の項目について,生徒の自己評価により調べた。
調査3. 実習装置の活用に対する生徒の評価 次の項目について,もっともあてはまる段階を選んで下さい。
4 よくあてはまる 3 あてはまる 2 あまりあてはまらない 1 全くあてはまらない
1 次の装置を使った実習は,「関心や意欲が高まった」
(1) 導通試験練習装置
(2) 電圧測定確認装置
(3) 故障発見練習装置
(4) アイロン故障発見装置
2 次の装置を使った実習は,「深く考えることが多かった」
(1) 導通試験練習装置
(2) 電圧測定確認装置
(3) 故障発見練習装置
(4) アイロン故障発見装置
3 次の装置を使った実習は,「回路計の使い方や理解に役立った」
(1) 導通試験練習装置
(2) 電圧測定確認装置
(3) 故障発見練習装置
(4) アイロン故障発見装置
4 これらの装置を使った実習の感想を書いて下さい。図5 は,各装置を活用した実習により,どの程度深く考えたかを,生徒の評価で調査した結果である。
図5 実習装置の活用に対する生徒の評価
調査3.−2「深く考えることが多かった」
この結果から,80%以上の生徒が,それぞれの実習装置の活用に対して,深く考えたと評価している。また,実習の段階が進むごとに生徒の評価が高まっている。
図6 は,調査2.「思考活動の程度」の各項目ごとに平均値で事前・事後の変容を示したものである。
事後では,事前に比ベ思考活動が活発に行われたことがわかった。特に「結果の考察」「まとめ」という項目の変容が大きい。これは,回路計で測定した結果をもとに,回路のつながりや故障の原因を分析し,総合的に考え判断する活動によるものと考えられる。
これらのことから,事象理解の段階を踏まえて,実習の難易度を徐々に高める実習装置を活用することは,思考活動を活発にすることがわかった。