研究紀要第118号 「基礎学力向上のための授業改善に関する実践的研究」 -070/117page

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て,いろいろな機器によるシミュレーションなどの疑似的な観察を行うことは,生徒の関心・意欲を高め,思考活動を促すのに有効であった。

実践6  コロイド溶液の学習において,観察・実験における,結果の予想,実験,結果などの各段階で,事象を粒子の大きさや性質と関連付けて考えられるように工夫したワークシートを活用した。教師と実習助手は,観察・実験の各段階で,生徒がワークシートに予想や結果について記入したことを,その都度,形成的に評価してフィードパックした。生徒は,このような一連の活動により,実験の各段階を確認しながら進め,実験結果の相互の関係を考え,コロイド粒子について理解することができた。

このように,ワークシートを用い,教師が観察・実験の過程で,生徒の活動内容を形成的に評価し,きめ細かくフィードバックすることは,思考活動を活発にし,確かな知識・理解の獲得に有効であった。

VI まとめ

次の観点から観察・実験,実習を工夫・改善することは,児童生徒の思考活動を活発にし,確かな知識・理解,技能の獲得に有効であることがわかった。

1 教材・教具については,次のような観点から工夫・改善や開発を行うことが有効である。

(1) 児童生徒の生活体験や身近な素材の中から教材化を図る。

(2) 製作活動を通して課題意識を高め,発展させることができるような教材を開発する。

(3) 児童生徒の実態に応じて,構造や操作が簡単で,事象が直観的に捉えられる教材を開発する。

(4) 事象理解の段階を踏まえて,知識・理解,技能の獲得過程をスモールステップ化した教材を開発する。

(5) 直接観察が難しい事象は,事象理解が深まる疑似的な観察がリアルにできるように,コンピュータ等の機器の活用を図る。

2 観察・実験,実習の展開では,次のような観点から工夫・改善することが有効である。

(1) 抽象的な概念の形成や技能の獲得を図るには,多面的,段階的に考えることができるように構成した「実験群」「実習群」を取り入れる。

(2) 工夫・開発した教材と併せてワークシートなどを活用し,観察・実験,実習の各段階で,事象や事象間の関係を把握することを支援する。

(3) 生徒指導の機能を生かし,観察・実験,実習を生徒自身が選択する場面を設け,生徒が自ら考えて解決する場を数多く踏ませる。

(4) 観察・実験,実習の過程で,生徒の活動について,T・Tなどによって形成的に評価を行い,きめ細かくフィードパックする。

<研究協力委員>

岩 瀬 村 立 白 方 小 学 校 教 諭 渡辺 和彦
郡 山 市 立 郡 山 第 一 中 学 校 教 諭 岡田 久美子
教 諭 松本
い わ き 市 立 内 郷 第 一 中 学 校 教 諭 四栗 慎二
福 島 県 立 福 島 東 高 等学 校 教 諭 須藤
福 島 県 立 福 島 西 高 等 学 校 教 諭 松本 仁子
福 島 県 立 福 島 北 高 等 学 校 教 諭 菅野

[参考文献]

1)「基礎学力向上のための授業改善に関する実践的研究−思考活動を活発にする支援について−」
福島県教育センター研究紀要Vol.27(平成9年)

2)「理科授業で使う思考と表現の道具(概念地図法と描画法入門)」中山迅・稲垣成哲編著 明治図書(1998)

3)「技術科教育の研究」日本産業技術教育学会技術教育分科会編集 朝倉書店(1993)


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