研究紀要第121号 「「生きる力」としての「学力」を育てる学校教育の創造」 -004/076page
(1)教師の改造
「教師の改造」を図る上で,最も効果的なものは,教師の意識改革と研修であるとの視点から,各学校で平成12年度から始まる「総合的な学習の時間」について,研修を通して取り組まなければならない課題解決のための方策や校種ごとの具体的に展開する際の視点について研究を進めてきた。
また,各学校で教育課程を編成する際の資料を提供することを目指して,中学校を例として時間割作成に関して考察を加えた。
(2)教材の改造
「生きるカ」を育てていくための教材の開発は特に大切である。そのために,各教科の本質を踏まえた教材の開発を推進してきた。特に情報教育においては,情報リテラシー,情報活用の実践カの育成という視点のもとに,学校インターネットの効果的な活用などの情報ネットワークの教育的活用や教育用ソフトウエアの開発を行い,教材としての情報や情報活用スキルの育成にも配慮した研究を進めた。
(3)学級の改造
「生きるカ」としてとらえた「人間関係をつくるカ」を,基本的信頼感を土台とした「自己肯定感」「他者とのかかわりを深めたいという思い」「思いを伝える技能」と押さえ,今年度は,「思いを伝える技能」を高める指導援助の在り方について研究を深めた。 特に協カ校での具体的な授業実践や日常の指導を通して,学級における人間関係づくりの在り方について考察を加え,「思いを伝える技能」を高めるには,「自己肯定感」の育成を基盤に,認知スキルや行動スキルに視点を当てた指導援助が有効であることを明らかにした。
(4)授業の改造
「小・中・高における授業の改造」に向けての研究の視点のうち,授業そのものの改造については,学力を育てる側面からの「学方向上のための授業改善に関する調査・実践研究」と,思考活動を活発にする工夫・改善を通した「基礎学方向上のための授業改善に関する実践的研究」との2つの研究主題により研究に取り組んできた。
○ 自ら学び,自ら考え,問題を見付け解決していくような児童生徒主体の授業への転換を図るために,学カ到達度調査を踏まえ,実態に応じて指導方法改善のための教材の開発や学方向上に向けた具体的な指導の事例を国語科,算数・数学科,英 語科についてまとめた。
また,高等学校保健体育科と芸術科,小学校生活科に焦点を当て,「生きるカ」としての「学カ」の育成を,「学ぼうとするカ」,「学ぶカ」,「学んで得た力」との関係を明らかにして,授業改善のための研究実践を進めた。
○ 「生きるカ」としての「学カ」をはぐくむための原動カである授業の改造に向けて,理科,技術 ・家庭科の授業では,科学的な思考の要素に着目し,思考活動を活発にするために観察・実験,実習で用いる教材の工夫・改善を行った。そして,授業実践を通してその手だての有効性について検証した。
IV 研究の成果と今後の課題
1 研究の成果
○ 本教育センターとしての研究課題を設定し,「教師の改造」「教材の改造」「学級の改造」「授業の改造」という4つの視点から,それぞれの専門を生かした部研究として,部の研究主題に迫ることにより,研究に深まりがみられ,大きな成果を上げることができた。
○ 研究課題の解決を図るために,調査研究から授業における課題を明らかにし,研究協カ校との連携を図りながら,子供の姿を通して検証をするステップを大切にしてきたことにより,「授業の改造」に向けた具体的な方策を提示することができた。
2 今後の課題
○ 新教育課程への移行期間,そして,完全実施後において「生きるカ」をどう育成していくかは,学校教育の在り方を考えるキーワードとなっている。本研究の成果を踏まえ,特色ある学校を具現するための在り方などについてさらに具体的で有効な手だてを追究していきたい。