研究紀要第124号 「基礎学力向上のための授業改善に関する実践的研究」 -031/076page

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基礎学力向上のための授業改善に関する実践的研究

―思考活動を活発にする教材のエ夫・改善―

科学技術教育部

 平成9〜10年度の研究から,児童生徒に確かな基礎学力を獲得させるには,児童生徒の思考活動を活発にすることが重要であることがわかった。そこで,本年度は,思考活動を活発にするために,科学的な思考の要素に着目して教材の工夫・改善を行い,理科及び技術・家庭の授業実践を行った。
 今回の実践では,児童生徒の思考活動を活発にするのに次のことが有効であることがわかった。
○ 教材を自作させることは,内容理解に役立ち,課題把握や解決法を考えさせるのに有効である。
○ 視覚や聴覚で「数量」を捉えさせる教材は,解決への意欲を増し,原理・法則を適用した工夫を促す。
○ 同じ原理の教材や連続的事象を同時に提示することは,関連付けを促し,まとめ等に有効である。
○ モデル教材は,観察・実験等と組み合わせることで,モデル化して考える思考を促す。
○ 製作中に生じる疑問を取り上げ,解決への適切な教材群を提示することは,思考活動を活発にする。

I 研究の趣旨

 これからの学校教育では,「生きるカ」の育成を基本とし,知識を―方的に教え込む教育から,子供たちが自ら学び自ら考える教育への転換を目指すことが必要である。自ら学び,自ら考えるということは,自分で課題を見つけ,体験や学んで得た知識をもとに自分から進んで考え,判断しながら課題の解決を目指していくという積極的な活動と捉えることができる。
 理科,技術・家庭の学習では,観察・実験,実習が重視されている。これらの活動の過程では,児童生徒が自ら進んで考えたり,工夫したりするなど思考活動を伴う場面が多い。この思考活動を活発にするためには,観察・実験,実習で用いる教材を工夫・改善することが重要である。工夫・改善した教材を用いた観察・実験,実習の中で行われる思考活動を通して,児童生徒が自ら獲得した知識・理解,技能は,「生きるカ」としての基礎学カとなると考え,研究を進めた。

II 研究の基本となる考え方

1 思考活動及ぴ科学的な思考の捉え方

 本研究では,思考活動を,当面する課題を解決し,事象を理解する過程であると考え,表1のような一連の活動として捉えた。
表1 [思考活動の過程]
1 学習課題は何かを把握する。
2 結果を予想する。
3 課題を解決するための方法や手順を考える。
4 工夫しながら課題解決に取り組む。
5 結果を,今までの体験や学習内容などと関連付けながら,はじめの予想と比較し,検討する。
6 自分で考えて結論を導き。課題を解決する。
7 自分の考えをまとめたり,発表したりする。
8 新たな疑問に気付く。

 理科の目標のひとつは科学的な思考を高めることにある。技術・家庭の目標は,生活に必要な基礎的な知識と技術の習得,生活を工夫し,創造する能カの育成であるが,知識や技術の習得及びそれらを活用する過程,創意工夫の過程では自分の頭でものを考え,判断し,表現することが要求される。技術・家庭においても思考カの育成は大切であり,その思考の基礎になるのは科学的な思考である。
思考活動の各過程では,さまざまな科学的な思考が働く。科学的な思考は,表2のようにいくつかの要素に分けて捉えることができる。


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