研究紀要第124号 「基礎学力向上のための授業改善に関する実践的研究」 -046/076page

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使用した教材 着目した科学的な思考の要素
許容電流実験装置 3(丸囲み)比較・分類 5(丸囲み)結果を予想 8(丸囲み)分析的な判断
発電モデル装置 7(丸囲み)筋道立てた推論 9(丸囲み)総合的な判断
配電線モデル装置 7(丸囲み)筋道立てた推論 10(丸囲み)モデル化した思考
電気回路設計装置 6(丸囲み)原理・法則の適用 7(丸囲み)筋道立てた推論
待機電カ測定装置 4(丸囲み)数量的な把握 8(丸囲み)分析的な判断 9(丸囲み)総合的な判断

科学的な思考の要素に着目したこれらの装置を用いた学習を,「テープルタップ」製作活動の過程に位置付けることで生徒の思考活動を活発にすることができた。思考活動が各段階でどのように変容したかを示すと下図のようになる。

「思考活動の程度」の変容
「思考活動の程度」の変容

グラフから,授業を重ねるごとに思考活動が活発になっていることがわかる。特に「課題の把握」と「結果の予想」の項目が高い。これは,製作中に直面した疑問を解決すべき課題と捉え,結果を予想しながら実験に取り組み,問題を解決する学習の展開によるものと考える。また,科学的な思考が働くことにより,これまでの生活経験と新たな知識が相互に関連付けられ,自分の考えとしてまとめることができたと考える。このことが,「結果の考察」や「まとめ」の項目の伸びに表われている。

実践3(中学校理科),実践5(高校化学),実践6(高校生物)における教材と着目した科学的な思考の要素の関係を示す。
実践 使用した教材 着目した科学的な思考の要素
3 ・自記式風向計 1(丸囲み)問題の正しい把握 2(丸囲み)適切な計画
5 ・セルプレートとプラスチック製注射器
・識別用酸・塩基群
2(丸囲み)適切な計画 3(丸囲み)比較・分類 4(丸囲み)数量的な把握
6 ・寒天包埋固定標本 ・粘土による胚モデル 3(丸囲み)比較・分類 4(丸囲み)数量的な把握 10(丸囲み)モデル化した思考

これらの各実践でも,科学的な思考の要素に着目した教材を工夫・改善して授業で活用した結果,児童生徒の思考活動を活発にすることができた。

VI まとめ

科学的な思考の要素に着目した教材の工夫・改善を行い,授業で活用することは,児童生徒の思考活動を活発にすることがわかった。

○機器を自作し観測したり,簡易な器具を用いた実験をしたりすることは,自ら観察・実験の計画 を立てようとする意欲を高め,課題把握や解決の方法を考える思考活動を活発にする。
○視覚や聴覚で「数量」を捉える教材は,課題把握への意欲を喚起し,原理・法則を適用した工夫 や自分なりの解決法を見いだそうとする思考活動を促す。
○条件を制御できる教材どうしの組み台わせや連続的な現象を同時に提示できる教材は,互いに補 完しあい,関連付けを通して結果を予想したり,まとめたりする思考活動を促す。
○自然の事物・事象を単純化したモデル教材は,観察・実験等と組み合わせることで,モデル化し た思考を促し,まとめるときに,より深い理解を促す。
○製作活動の中で生じた疑問を取り上げ,実証しながら解決できる教材を提示することは,課題を 把握し,結果を予想したり,考えをまとめたりする思考活動を促す。

[参考文献]
1)福島県教育センター研究紀要VOL.27(平成9年)
2) " VOL.28(平成10年)
3) 中学校理科指導資料「理科における学習指導と評価の工夫・改善」文部省(平成5年)
4) 「技術科教育の研究」日本産業技術教育学会技術教育分科会編集 朝倉書店(1993)
5) 「平成11年度子ども科学教室指導者養成セミナー」講座資料 国立オリンピック記念青少年総合センター


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