研究紀要第124号 「基礎学力向上のための授業改善に関する実践的研究」 -045/076page
V 研究の成果
本研究では,観察・実験,実習において,児童生徒の思考活動を活発にするために,科学的な思考の要素に着目して教材の工夫・改善に取り組んだ。以下に,事例を取り上げながら,着目した科学的な思考の要素及び生徒の思考活動の程度の変容についてまとめる。
実践1(小学校理科) では,「光を当ててしらべよう」のゲーム形式の授業で,科学的な思考の要素に着目した次の教材を用いることで,児童の思考活動の活発化を図った。
「光量レべルインジケータ」を用いることで,児童が漠然としか感じなかった光量を,視覚や聴覚で数量的に把握させることができた。その結果,児童の「もっと光を当てたい」などの意欲を喚起できた。更に,反射の法則を適用しようとする態度の変化を促すことができた。
使用した教材 着目した科学的な思考の要素 光量レベルインジケーター 4(丸囲み)数量的な把握 6(丸囲み)原理・法則の適用 フィルムケース温度上昇感知器 3(丸囲み)比較・分類 4(丸囲み)数量的な把握 6(丸囲み)原理・法則の適用
「フィルムケース温度上昇感知器」を用いることで,手の感覚では捉えにくい温度変化を数量的に把握させることができた。また,フィルムケースに巻き付ける紙の色の違いによる温度変化を捉えることで,比較・分類の科学的な思考を促すことができた。
一連の活動を通して,下図のように,思考活動はすべての項目で事前より事後に活発になったことがわかる。特に,「課題の把握」「解決の方法」「方法のエ夫」「自分で解決」が大きく伸びた。
「思考活動の程度」の変容
実践2(中学理科)では,いくつかの教材を組み合わせることで科学的な思考を促し思考活動の活発化を図った。
使用した教材 着目した科学的な思考の要素 紙ブ−メラン 風力モーターカー 3(丸囲み)比較・分類 6(丸囲み)原理・法則の適用 9(丸囲み)総合的な判断 電気盆 9(丸囲み)総合的な判断 遊び的要素をもち,制御された運動をする紙ブーメランと風カモーターカーを,セット教材として活用して,互いの運動の様子を観察させることで比較・分類したり,風カモーターカーの観察からわかった原理・法則を紙ブーメランに適用したり,互いの運動の関連付けを図ったりするなどの科学的な思考を促すことができた。
また,電気盆を使って,「蛍光灯の点灯」「百人おどし」などを体験させることで,働く力を静電気と関連付けて総合的に考える科学的な思考を促し遠隔力をより深く理解させることができた。
その結果,下図のように,思考活動は,全項目とも事後が上回ったことがわかる。特に「結果の予想」「結果の考察」「自分で解決」の項目が大きく伸びた。実践4(中学校技術・家庭)では,導入題材として使用されている「テープルタップ」にバイロットランプと中間スイッチを付け加えて,幅広く電気領域の学習ができる主題材とし生徒が製作活動をする中で生じる疑問を課題として取り上げ,それらの疑問を解決する過程で,生徒の思考活動の活発化を図った。次に,製作活動の中で生じる疑問にこたえる主な装置名と科学的な思考の要素との関連を示す。