研究紀要第127号 「「生きる力」を育てる学校教育の改革」 -001/074page

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「生きる力」を育てる学校教育の改革

研究推進委員会

 「ゆとり」の中で自ら学び自ら考える力などの「生きる力」の育成を基本とし,教育内容の厳選と基礎・基本の徹底を図ることを目指した教育課程が全面的に展開されようとしている。しかし一方,刹那的,短絡的に行動しがちな子供たちの姿が目に付く。そのようなことから,学校教育には生涯学習の基盤づくりを意識し,体験的な活動,問題解決的な学習を中心とした教育活動が求められている。
 本研究では,こうした教育界の現状やその背景の考察をもとに,「生きる力」を育てることに焦点を当てた学校教育を具現するための研究を推進することとした。
○ 子供たちが喜んで登校し,勉学に励むために,各学校が自校の立地条件,地理的・人的環境,子供たちの特性等を十分勘案して「特色ある学校経営」を生み出すための方策を探る。
○ 各授業等において自ら学び自ら考える力の育成を意図した教育活動を展開していくことが大切なことから,それぞれの教科等の特質を生かした授業の在り方を実践的に研究する。
○ 2005年までには全ての学校でインターネットが整備されるなど,情報化が一段と加速されることを考慮し,情報ネットワークの教育的活用の在り方,教材ソフトウェアの開発に取り組む。
○ 少子化傾向や室内遊びが常態化することによる仲間意識や連帯感の希薄化や疎外感の増大に対処するため,「人間関係をつくる力」を育成していくための指導の在り方について研究する。

1 研究の趣旨

 「ゆとり」の中で「特色ある教育」を展開し,子供たちに「生きる力」を育成することを基本的なねらいとする新学習指導要領の全面実施が間近となってきた。文部科学省は,「生きる力」をはぐくむには「創意工夫を生かし特色ある教育活動を展開する中で,自ら学び自ら考える力の育成を図ること」「基礎的・基本的な内容の定着を図ること」「個性を生かす教育の充実」に努めなければならないとしている。 注1

 一方,子供たちの現状を見ると,少子化がますます進む中,都市型生活が一般化し,自室での一人遊び傾向が強まり,社会体験や自然体験の不足が顕著となってきている。社会体験や自然体験の有無は子供たちの倫理感や社会性を培う上で重要な意味を持つという指摘もあり, 注2 生涯学習の基盤を培う場としての学校教育において看過できない課題と考えられる。

 当センターでは平成9年度から3年間,「『生きる力』としての『学力』を育てる学校教育の創造」を研究課題として教師,教材,学級,授業それぞれの改造をいかに進めればよいかを研究し,その成果を研究紀要Vol.27,28,29として公刊してきた。その中で,学校の活性化を目指す教員研修の在り方,「生きる力」としての「学力」を育てる授業の要件に関する研究,授業改善のための教材開発や情報ネットワーク活用の在り方,学級の人間関係づくりに関する研究等として私たちの考えた望ましい姿を明らかにしてきた。

 しかし,「『生きる力』としての『学力』を育てる学校教育」の在り方について,より明確にしていく必要があること,各学校がその置かれた状況に合わせた形で実践できる教材や授業の工夫をより豊かにしていく必要があること,といった課題が残されていた。

2 研究課題設定の背景

1 子供たちの現状をどう捉えるか

 新学習指導要領解説では,改訂の経緯の冒頭において「今日,受験競争の過熱化,いじめや不登校の問題,学校外での社会体験の不足など,豊かな人間性をはぐくむべき時期の教育に様々な課題があり,…」と述べている。 注3

 確かに,「子供たちが変わってきた」という声を耳にすることが多くなっている。ギャング・エイジなどと称され,群れて遊ぶ世代の代表的な存在であった10歳前後の子供たちが一人遊び中心の生活を送っている,自分でリンゴやナシの皮をむくといっ


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