研究紀要第128号 「特色ある学校づくりを目指す教育課程に関する研究」 -017/074page
協力校に実践を依頼して,研究に取り組んでみた。道徳ノートは「心のノート」と称して,A4判ファイルに40枚ほどの用紙を綴じ その紙に,ワークシートや道徳の資料を添付できるようにした。また,表紙には,自分が1年間努力していく道徳性に関するめあてを記入し,裏表紙には,道徳の学年の内容に沿って,行動の自己評価表を貼り,1ヶ月ごとに自己評価していくことにした。なお,実施学年は小学校第3学年である。
<2> 活用の実際
最初の道徳性に関するめあてについては,「やさしい心」が4名と最も多く,その他「明るい心」「やさしさのある心」「美しい心」「楽しい心」「元気な心」「思いやりのある心」「きれいな心」「ゆたかな心」「天のような心」「気をつける心」などがあり,各自が表紙にめあてを大きく書いていた。
ノートの中には,授業で使用した資料やワークシート等が糊付けされており,また,授業の終末で渡された親からの手紙も丁寧に貼られていた。
教師は,毎時間,「心のノート」を集めて,一人一人に応じた激励の言葉や助言を書き添えた。教師のコメントは,子供たちが意欲を持って継続して取り組む大きな要因となった。
自己評価表には,自分の生活を振りかえり,自分でよくやっている箇所に好きな色を塗っていった。児童は自分の評価基準をしっかりと持ち,自己評価をして行動を見つめ直す児童の姿が見られた。
道徳の時間に「心のノート」を継続して使った感想は次の通りである。
○ 勉強したことが残せておけて良いと思う。 ○ 道徳の意味がわかってきた。 ○ 使ってみてとても楽しいと思った。 ○ 自分の意見がまとまって便利だと思った。 ○ 書くところが大きくて書きやすい。 ○ 自分の考えがメモできて,反省やまとめが書きやすい。 ○ 3年生になって初めて使ったのでうれしい。 ○ 書くことが少したいへんだった。 ほとんどの児童が「心のノート」の使用を好意的に見ていた。しかし,自分の考えを書く作業やワークシートなどを貼る作業も多くなるので,難しかったとする児童もおり,発達段階に応じた「心のノート」づくりなど,今後検討が必要である。いずれにしても,実施する場合は,全学年の共通理解のもと継続して取り組むことが望まれる。
(5) まとめ
道徳教育を中核とした特色ある学校づくりは,かなめとなる道徳の時間を地道に取り組み,その指導を充実させることが基本になると考える。日々の道徳授業の充実につながるものとして,「道徳教育通信」「資料の検索システム」「心のノート」などを中心に研究を進めてきた。
「道徳教育通信」と「心のノート」に関しては,研究協力校の活用実践を通して,その有効性を確かめることができた。「資料の検索システム」については,さらに,心に響く資料が探しやすいように改善していきたい。