研究紀要第130号 「自ら学び自ら考える力を育成する授業改善に関する研究2」 -046/074page
ここでは,既習事項との関連を図りながら,論理的に考えたり見直したりして実験計画を立てることがねらいである。
例えば,油脂を構成する脂肪酸は,炭素の不飽和二重結合を有するものが多い。この二重結合の存在を確かめる実験なども実験計画に取り入れるようにする。このことにより,既習の内容が次の学習に生きるものであることを実感させることができると考える。
また,実験計画を立てる際には,計画した実験の結果を予想したり,適切な実験計画ができたかどうかを他の班の実験計画と比較しながら自分で再検討したりできるようにする。
《第3時》:油脂についての実験と報告書の作成
a 計画に基づいて実験し,性質や反応について調べる。 b 調べた結果を発表する。 c 実験の計画から考察までを報告書にまとめる。 ここでは,実験を行い,その成果について筋道を通して考察したりまとめたりすることで,達成感を味わわせることがねらいである。
3 教材・授業展開に対する評価
−アンケート調査から−
高等学校の教師15名に協力を得た。
(1) 簡易抽出器についての感想
・ 油脂を自分で抽出することの喜びを感じることができる。 ・ 生徒にとって手作りの点がなじみやすく,り付きやすい器具である。 ・ 展開に「装置を作る」活動を取り入れれば,生徒の学習意欲を高めることにつながる。 (2) 各設定場面についての評価
次のグラフは,設定した場面 ア〜エ が,「関心・意欲を高める」「自分で取り組んだという意識を持たせる」ことにつながるかどうかを調査したものである。
場面 ア では,どちらの項目も評価が高く,教材の活用がこれらの伸長に有効であると考えていることが分かった。
また,場面 エ では,「自分で取り組んだという意識を持たせる」の項目で評価が高かった。実験と報告書の作成を行うことで,生徒が自分で取り組んだという達成感を味わうことができると判断している。
(3) 科学的な思考の活発化についての評価
次のグラフは,場面りにおいて,科学的な思考が活発化するかどうかを調査したものである。
「筋道を通した推論」で少し評価が低いものの,「適切な実験計画」「原理・法則の適用」「総合的に判断」につながると答えた割合は高かった。このことから,科学的な思考の活発化につながると考えられる。
4 まとめ
自分で選んだ食品からの油脂の抽出を取り入れた探究活動の設定は,関心・意欲を高め,自分で取り組んだという意識を持たせ,科学的な思考を促すことができると考える。
今後,生徒の能力差を考慮した指導法などについて,さらに検討していきたい。