研究紀要第130号 「自ら学び自ら考える力を育成する授業改善に関する研究2」 -045/074page

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調査研究 2   高等学校理科 化 学

1 単元・領域

○ 化学IB「物質の性質」有機化合物

  油脂に関する探究活動(3時間)

2 研究の概要

(1) 授業展開と教材の工夫

<1> 授業展開の工夫

 本研究では,生徒に,「自分が観察・実験に取り組んでいる」という意識を持たせることで,自分で解決しようとする意識や取り組む意欲を持続させ,課題解決の達成感や充実感を味わわせようと考えた。また,実験方法を考えたり,自分の考えを振り返ったりする場面を設定することで,筋道を通して考えたり,自分の考えを批判的に見直したりする力を高めようと考えた。

 上記の考えに基づき,有機化合物の油脂の学習において,次のア〜エの場面を設定した。

 「自分が取り組んでいる」という意識を持たせるために,油脂を含む食品を自分で選択し抽出する。
 既習の内容と関連付けて,自分が抽出した油脂の性質などを確かめる実験を計画する。
 他の班の実験計画の発表を聞き,自分の班の実験計画と比較して再検討し,実験を行う。
 自分が取り組んだ実験を振り返り,それぞれ報告書の作成を行う。

<2> 教材の工夫

図 教材の工夫

 場面 で,生徒が自分で油脂を抽出することができるように,右図のような簡易抽出器を製作した。

 油脂を抽出する溶媒には,沸点が低く引火性が高いエチルエーテルが用いられる。そのため,冷却効率の良い冷却器が必要であるが,高価で数をそろえることはできない。


写真1 油脂の抽出
油脂の抽出

写真2 溶媒の除去
溶媒の除去

 そこで,身の回りにあるペットボトルを加工して冷去器とした。ペットボトルの中に氷水を入れておくことで,溶媒の蒸気が拡散することなく安全に抽出を行うことができる。

 また,油脂の抽出容器として試験管を用いることで,油脂の抽出に用いた溶媒を他の容器に移し変えることなく除去できるようにした。

(2) 授業展開例

 授業展開例を以下に示す。なお,生徒の実態によっては,授業展開に簡易抽出器の製作活動を位置付けることも考えられる。

《前時までの対応》

 第1時までに,身の回りで用いられている油脂について,各自調べておくように指示する。また,油脂を含む食品を家から持参させる。

《第1時》:自分で選んだ食品からの油脂の抽出

a  各自調べてきた油脂について発表する。
b  持参した食品の中から,自分の班で抽出するものを選択する。
c  油脂の抽出方法を確認する。
d  油脂の抽出を行う。

 ここでは,課題に取り組もうとする関心・意欲を高めたり,油脂を抽出することで達成感を味わわせたりすることがねらいである。

《第2時》:実験計画の発表と計画の再検討

a  学習した油脂の構造・性質・反応について教科書や資料などで確認する。
b  抽出した油脂について,性質や反応を調べる実験を計画する。その際,検討した実験方法で得られる結果を予想しながら実験計画を立てる。
C  班ごとに調べる内容・方法を発表する。発表を聞いて,自分の班の計画を再検討する。

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