研究紀要第132号 「「人間関係をつくる力」を育てる指導援助に関する研究」 -057/074page

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「人間関係をつくる力」を育てる指導援助に関する研究

−小学校における指導援助プログラムづくり−

教育相談部

 平成9年度から11年度までの研究において,「人間関係をつくる力」としてとらえた自己肯定感や人とかかわる技能を育てることが,豊かな人間関係をはぐくむ上で必要不可欠であることが明らかになった。今年度は,この成果を土台に,児童生徒が発達段階において身に付けておきたい自己肯定感や,人とかかわる技能の具体的な内容を明らかにし,そのための効果的な活動の位置付けや展開についての実践的な研究をすすめ,学校で活用できる指導援助プログラムの作成をめざした。
 小学校5年生を対象に,「人間関係をつくる力」の実態を明らかにする事前調査を実施し,学級担任との話し合いから指導援助プログラムの試案を作成した。約3か月間の中でプログラムにもとづく指導援助を行ってきた結果,自己肯定感や技能,自己表出などに好ましい変容が見られるとともに,友達と積極的にかかわる姿や,学級を支持的にとらえる児童の割合が増えたことから,「人間関係をつくる力」を育てる指導援助プログラムの有効性が確認できた。

1 主題設定の趣旨


 児童生徒は,他の友達や教師とのかかわりの中で様々な活動に取り組み,多くの体験を積み重ね,それぞれが持つ課題の解決に努力し,個性を伸ばしながら自己改革,自己の実現を図っている。この「自己改革・自己実現」が「生きる力」としての学力であり,この力をはぐくむためには,友達や教師,家族など,他者との人間関係を豊かなものに改善,充実することが望まれる。

 この人間関係を豊かにしていく力は,これまでの学校生活や遊びの中で,または大人の姿から自然に身に付けてくるものであった。しかし,不登校等の問題は年々増加の傾向にあり,対人関係での体験不足や希薄化にその要因が認められるなど,この力が十分でない現状がある。

 このようなことから教育相談部では,学校教育の中で「人間関係をつくる力」を計画的,系統的に育てることが必要になってくると考え,学校現場で活用できる指導援助プログラムづくりを研究の主題とした。

2 「人間関係をつくる力」について


 本研究では,自己肯定感と人とかかわる技能の2つを,「人間関係をつくる力」とおさえた。

1 自己肯定感

 認知と感情が,人間の行動を規定する要因であることから,本研究では,自己肯定感を「知覚された自己についての肯定的な認知(自己理解)と,それを受け入れること(自己受容)によって生じる満足の感情から構成される」と概念規定し,「自己のありのままを受け入れる力」と定義した。

 自己理解は,自己の言動に対する他者からの評価や働きかけによって深められる。これは,同時に他者理解も深めることになることから,自己理解と他者理解は,並行して深まっていくものと考えられる。また,自己受容は,他者の肯定的な受容の態度が自己の嫌悪する側面を浄化させ,再び自己を見つめ直すことによって深められる。したがって自己肯定感の形成は,肯定的な自己理解と自己受容との関連,そして他者とのかかわりに合わせて深められる「他者理解」「他者受容」の在り方がポイントとなる。

 これらのことから,自己肯定感は,肯定的な「自己理解」「自己受容」「他者理解」「他者受容」から構成されるととらえた。

2 人とかかわる技能

 人とかかわる技能は,(資料1)の「行動」部分(どう行動するか?の具体的行動)のみを指すのではなく,行動に至るまでの「どのように行動したら


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