研究紀要第132号 「「人間関係をつくる力」を育てる指導援助に関する研究」 -058/074page
よいか(適応的で有効な行動)」というコンピテンス(効果的に他者と相互作用する能力)も含めてとらえる必要がある。つまり,これまでの知識や経験にもとづいて,「どのような行動が適切か」また,「それを実行した場合,どう評価されるか」や,「実行できるか」の判断といった「認知」や「態度」の形成が,図に示す「行動」を左右するということである。
このことから,人とかかわる技能を,相手の立場や思いを考えながら(認知的側面),自分の思いを効果的に伝える(行動的側面)ことで,良好な関係をつくることができる力ととらえた。
※ 態度…行動しようとする気持ち,心の準備ができあがった状態
3 研究の内容・方法
○ 理論研究,研究協力校での実態調査を通し,小学校高学年における「人間関係をつくる力」の具体的内容を明らかにする。
○ 指導援助プログラムの試案を作成し,研究協力校での実践を通してプログラムの有効性を検証する。
○ 実践をもとに,小学校高学年における「人間関係をつくる力」を育てるための指導援助プログラムを作成する。
4 研究の実際
1 実態調査とプログラム試案作成
(1) 「人間関係をつくる力」の実態調査
児童の「人間関係をつくる力」を中心に,その実態を明らかにするとともに,全県対象の調査結果(平成10年度実施)との比較を通して,小学校高学年の時期に身に付ける自己肯定感,人とかかわる技能の具体的内容を明らかにするための事前調査を実施した。
調査は,評定尺度法(4件法)と記述式の組み合わせを用いて実施した。なお,この用紙(資料2)は変容をとらえる事後調査用紙としても活用した。
事前調査の結果から,本学級では,「肯定的他者受容」と「思い」,「心理的距離」が高い数値を示し,その反面,「肯定的他者理解」(みんなは,私のいいところを知っている)や「技能」の数値が低いとい