福島県教育センター所報 創刊号(S46/1971.6) -005/012page

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福島県小学校長会長 大須賀 正美

県教育センター所報創刊号に寄せて




過去数十年にわたり,人類は近代文明と科学技術の急速な進展に伴なう高度経済成長の恩恵にあずかり,人間の生活は予想以上の向上をみ,豊かな社会を築いてきました。しかし経済成長のかげでは自然破壊や人間疎外の憂うべき現象がさまざまのかたちで表われてきており,人類はかつて経験したことのない数多くの矛盾に直面し,みずから悩まざるを得ない状況に立たされております。

今や人類はみずからの命運をかけその将来のために近代文明のひずみを克服し,人間尊重の理念に徹した新しい文明を創造していかなければなりません。日本民族の次代の担い手をどのようにして育てるかという教育の原点にかえって豊かな人間づくりをめざして,わたくしどもは教育問題に真剣に取り組むべき時期にきていると思うのであります。

わたくしどもは,昨年来「小学校教育の充実刷新を図ろう。」との主題に立ち向い,「未来をひらく小学校経営の具体策を探求する。」の研究課題のもとに精進してまいりましたが,なんといっても人間形成者としての深い教養と使命観に立った教師が数多く輩出しなければならない時でもあることを痛感しております。

教職員の資質の向上は教師その人の児童愛に根ざした絶えざる自己研修の積みあげにあると思います。内外のこのような要請にこたえるべく,県内の教職員の一般教養,専門的知識,指導技術の向上を意図して,このたび,福島県教育センターが発足したことは誠に意義深いものがあり,本県教育の発展のため大いに期待されるものであります。

教職員の研修機関として,また教育研究機関,教育に関するサービス機関としての性格をもつ県教育センターは,校長,教頭を対象とした学校経営に関する講座,中堅層を対象とした学年経営等に関する講座,教科主任を対象とした各教科の教材研究や指導技術等の講座,教育機器をとりいれた講座等の研修,教育思潮や教育研究法等に関する研究等が事業内容としてあげられており,教職員の自己研修をさかんにするための場と機会を提供してくれることになり,今後の成果に目をみはるものがあると信じております。

最後に,教育センター発足に際し,運営上考えられるいくつかの点について要望したいと思います。

まず,実際運営にあたっては,地方の意見をすいあげるため地方代表者による運営委員会のようなものを設置されてはいかがだろうかということです。つぎに,利用者に喜んでもらえるように研修参加者の宿泊施設を完備し,さらに,食事の点でも満足のいくようにしていただけたら結構かと思います。また,福島駅とセンター間はだいぶ距離があるということですので,臨時のバスを出すなどして交通の便をはかっていただきたいと思います。

そして,センター設立の趣旨を広く理解してもらうために各校の学校長や一般教職員が,気がるに施設等の見学ができるよう手配していただきたいと考えます。

県内の教職員各位には,自己研修のためにセンター設立の趣旨,目的をじゅうぶん理解されて,すすんで利用されるようお願いし,本県教育の発展のためにさらに精進されるよう望んでやみません。

県教育センターが,本県教育界のメッカたらんことを念願しながら,教育センター設立に関係された各位のご努力に感謝し,さらに今後のご健闘をお祈りいたします。

県教育センター所報創刊号発刊にあたり一言お祝いのことばを申し述べました。

   福島県小学校長会長 大須賀 正美


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