福島県教育センター所報 創刊号(S46/1971.6) -004/012page

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福島県中学校長会長 新井田 忠雄

教育は教員の研修から
―教育セソターの開設を祝して―




「教育とは平凡なことの積み重ねであり,それは愛情と根気によって支えられているものである」

これは私の不動の教育観であります。しかも教育は絶えず進歩しなければなりません。ところが教育界というのは不思議なところで,教育ジャーナリズムに乗っての理論はまことに華かで○○主義とかXX方式というのが次から次と現われてはすぐに消えてゆくし,教育制度もまた絶えず論議され改革されてきたのですが現場の教室での実践は私どもが昭和初期からやっていたものとほとんど変らないような気もします。

近頃また教育界に「機器の導入」が強く叫ばれていますが,その現状を見ますと,次から次と出てくるものの中には「教師にとって便利だから」というだけのものも多く見られるし,しかもそれは今年買っても来年また目新しいものがとび出してくるという類のものも多く,まさにメーカーにふり廻わされているような傾向が強く感じられます。

それに問題なのは教師の力そのものだと思います。私が以前調査したものの中に,ある地域の理科設備の充足率と学力テストの結果を学校別に照合してみたところその相関系数が全く低く,特に中学校よりも小学校にその傾向が甚しかったというのがありました。この事実は少くとも現場教師の現実の一面であることは否定できないと思います。

県政の基本とされる「人づくり」も問題は教師であり,教師のカであります。思潮を実践するのも教師であり,設備を動かすのも,制度を生かすのもすべて教師であることは古今を通じての真理だと思います。

私たち中学校長会もこのような観点から過日の総会で規約の改正までして研究部の強化をうたい,校長としてのリーダーシップを確立することによって現場教師の先頭に立とうと決意したところであります。

ここにこうした現実に立ち,時代の急激な進展に即応する教育の要請に応えて,総合的な教育センターの開設を見たことは本県教育界にとっての大ヒットであり画期的な偉業として喜びに耐えません。さらにその規模は全国的にもトップレベルのものであり,計画されている内容もまたまことに適切にして,年次計画によって2万人に及ぶ県内小中高校教師全員が遂次研修をうけることになるということです。

幹部,中堅,青年の各層に亘っての教師は,男女を問わずそれぞれの希望に胸を躍らせていることと想像されます。まさに本県教育の進展が目に見えるような気がします。

しかしながら本県の教職員数に照らし合わせてみたときに,まだじゅうぶんとはいえないようにも思われます。

慾をいえばきりのないことですが将来はさらに県内の各方部に分室を設置することのできるような段階になればさらにさらに本県教育の万全が期されるのでは……などと夢ははてしなく拡がります。

何はともあれ待望久しかった教育センターの実現はまことにうれしいことであり,当局の適切な研修計画をお願いすることはもちろんですが,現場の教師の1人1人がこれを機会に心を新たにして,自己研修及び自主的な研究団体の運営まで再検討をしなければならないときだと思います。

最後にこれが開設までのすべの関係者に心から感謝するとともに,今後この運営に当られる方々のご健闘をお祈りして止みません。

   福島県中学校長会長 新井田 忠雄


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