福島県教育センター所報 第4号(S46/1971.12) -006/025page

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情緒障害者

研究・相談部  伊藤 武司

教育相談を担当して,いちばん困ったことは,心身に問題をもつ児童,生徒の理解と指導の題題である。
特に,情緒障害については,全国情緒障害教育研究会が生れたほど,関心事のひとつである。以下このことについて,知り得たことをのべて,参考に供したい。

1. 情緒障害者の定義

用語の定義は必ずしも明確であるとはいい難い。
そもそも情緒とは,自已の身体的または心理的な存在(諸要求,体面,面目,自尊心)がおびやかされたと感じたとき(あるいは促進されたと感じたとき)に急激におこる心理的及び身体的な激動,混乱状態をいうとされている。そして,その主要なものに怒り,恐れ,よろこび,愛情,悲しみ。嫌悪などがあげられる。

その障害というのは,いわば感情的,情緒的なもつれ,あつれきに起因する行動上の異常と考えてよいであろう。(情緒的,心理的な原因の認められるもの)

特に身体的な欠陥や器質的な病変のあるものはふくまないという点では,多くの人の意見は一致している。

また,発達の途中のある時期において,正常ではあるが,他の時期では問題になる現象がある。たとえば夜尿は幼児期では誰でもすることであるが,ある時期にはなくなるものであるから,それ以後にのこったり,あらたに発生すれば問題になる。幼児語とか指しゃぶりも同様である。このような現象まで問題行動,情緒障害とすると,その数は激増するであろう。

2. 実態

文部省の全国調査(昭和42年10月15日から11月20日)の結果によると,情緒障害と疑われている者は,小学校43,002名,中学校20,715名,合計63,717名で,その内訳は,

(1)登校拒否症 2,883名
(2)神経症 522名
(3)絨黙症 8,358名
(4)自閉症 3,339名
(5)精神症 3,394名
(6)脳の器質障害 2,216名
(7)その他 43,005名

となり,その出現率は0.43%だという。

この中約60,700名が,普通学級に在級し,残りは特殊学級にいるとすると,大部分の該当児童,生徒が普通学級の中で放置されたままになっているといえよう。

3. 教育形態

惰緒障害児の教育も,一般普通児童に対する教育も,その基本的目的においては全く変らないが,具体的な教育活動の段階になると,独自の具体的目標があって当然であろう。その教育形態も,その障害の程度によって異なるが,いまその形態を考えると,

(1) 普通学級の特別な教育的配慮のもとに行なう形態

(2) 大部分普通学級で学習するが,特定の時間に特別の指導(心理治療)が受けられる施設が設置されている形態

(3) 大部分を特殊学級で過ごすが,特定の時間に特定の教科の学習を普通学級で受ける形態

(4) 特別の特殊学級(普通学校の特殊学級,児童福祉施設内の特殊学級,病院内の特殊学級等)で教育を受ける形態

(5) 特別の独立した学校で教育を受ける形態


この五つの形態が基本になるものと思われる。

しかも,ひとりひとりの児童・生徒の障害の程度によって,弾力的,柔軟性のある教育的措置が必要であろう。

4. 教育内容

普通児のように,各教科,道徳,特別活動の3領域で教育課程を編成するだけでなく,心理治療とか,適応指導とか独特の教育内容が必要となろう。
肢体不自由教育における「体育・技能訓練」
病弱教育における「養護・体育」
特殊教育における「養護・訓練」

これらのように,その障害の種類によって特別な内容が必要かと考えられる。

5. 方法論

(1) まず,医療との関係をどのように考えるべきであろうか。

(2) また,治療教育なのか,教育治療なのか,どちらの考え方をとるべきなのか。

(1)については,児童・生徒を中心に考えて,教育の立場ではここまで行ない,医療の立場ではこの面を受けてということをはっきりしておくべきだが,当然重複する面もでてくるだろうと思われる。

(2)にっいては,教育の立場では,教育治療であり,医療の立場からは,治療教育であり,何れか一方の立場でなければならないのではなく,その障害の程度,治療経


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