福島県教育センター所報 第4号(S46/1971.12) -007/025page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

過から考えて,よりよい方法をとればよいので目的と方法をごっちゃにしてはならない。何れにせよまだ,未解明,未開拓の面が多く,全国の同志の方との強い連けいが肝要であろう。

6. 教育のあり方

全国に6万数千もいる情緒障害児を緊急に,どのように処置すればよいのだろうか。治療機関としての施設もすくなく,大部分が普通学級の教師の手で救うより方法がないという現況の中でどうすればよいのであろうか。全国情緒障害教育研究会の研究紀要の中から,どんな意見が出ているかを紹介しよう。

(1)学校において情緒障害児を教育することは可能である。この確信のもとに,教育の可能性を追求していきたい。

(2)ひとりの情緒障害児のために困っている教師の多いこと。そのために学習を妨害されている児童がどれだけ多いことかを考えると,特殊学級を設置して何人かの教師が,その教育に専念し,効果を上げることが急務である。

(3)情緒障害児が出現しないような家庭教育,学校教育が行なわれるような,学校や杜会の理解と関心を高める施策を必要としている。
「情緒障害」ということばを理解している人がきわめて少ない。知らないだけでなく重大た誤解をされないよう啓蒙しなければなるまい。

(4)特殊学級を設置しても,入級を希望し,承諾する児童,保護者があるかという心配,収容する児童の質によって教育の困難度が異なるので不安である。
また,収容期間も,障害の質や軽重によって長短はあっても,可能な限り早急に普通学級に復帰させる必要がある。そのためには,いわゆる親学級制度的なものを検討する必要がある。

(5)情緒障害児は共通して劣等感,不信感をもっているが,その保護者も同様の場合が多い。それは児童・生徒に関する苦情を聞され続けられた結果である。親の教師に対する信頼をとりもどすことが教育の成否を決定するのではなかろうか。

(6)情緒障害教育のための特別のカリキュラムを必要とするが,普通教育の場への適応を考えて,可能な限り一般のカリキュラムを採用する必要があろう。

(7)教育の段階についてだが,入級児童・生徒の質や年令,入級の時期等を調整し,例えば,
 [1]治療を重視した段階
 [2]教育的環境に適応させる段階
 [3]普通教育の場への適応準備する段階
等に区分して教育上の配慮をすれば効果的であると考えられる。

7. 考察

情緒障害は,本人の身体的,知的欠陥がなく,心理的,情緒的なあつれきに起因する問題行動であるからどんな形の問題行動もおこりうるのであって,文部省調査による, 登校拒否,神経症,緘黙症,自閉症,精神症,脳の器質障害 をあわせて20,712名に対してその他が,43,005名で2倍強であることからも,うかがい知ることができよう。

あらわれる問題行動は千変万化し,系統的分類は容易でないので,貝体的な症状をとらえてそのままよぶことも多い。
どもり,だまりこくっている子,強迫的な行為,首をふる,手をうごかす(筋肉の一部が本人の意志に関係なくある動きをくりかえす)恐怖を訴える。かんしゃく,反抗,乱暴,虚言,その他

検査法としては,まず,それが器質的・身休的な原因あるいは知的な欠陥によるものでないということをみるために,医学的諸検査たとえば脳波や知能検査があげられる。そして,その心理機制やパーソナリティの特長をはあくするために,ロールシャッハなどのブロジェクティブ・テクニックが主に用いられるが,これは専門的内容になるので,関係機関との連携が必要である。また,原因が対人関係のあつれきに起因することが多いから,本人はもちろん,家族との面接も重要な方法としてあげられよう。(参考資料―心身障害児の判別,全国情緒障害教育研究会紀要,学習指導要領など)


明治期における学校沿革誌(1)

―その編さん過程の概観―

研究・相談部  松崎  弘道

1. はじめに

現在,学校沿革誌は学校教育法施行細則第13条による永久保存の表簿である。明治期においてこれの備付を義務づけたのは32年12月(県訓令甲第73号「小学校ニ備フヘキ諸帳簿ノ件」)であり,保存期限を規定したのは,39年7月(県訓


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育センターに帰属します。