福島県教育センター所報 第5号(S47/1972.3) -001/025page

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巻頭言

所長  白岩 和夫

所長 白岩和夫

昨年の4月1日教育センターが開所してから1年に近い月日が経過したわけであるが,まことに時の流れの速さを感じさせられる。

いまわが国の教育界の目は,中教審の答申をめぐっていわゆる「第3の教育改革」に向けられている。これを世界史的な観点から見るならば,第二次大戦中から戦後にかけて各国が教育の改革と充実に着手し,以来真剣な努力を傾けて来ている一連の流れの中に位置づけることができよう。特にソ連のスプートニク打ち上げを契機として科学・技術教育の推進と強化を先駆とした教育施策が世界の大きな波となったことは周知のとおりであり,教育爆発という強い響きを持つたことばを聞くようになってからもうすでに久しい。

最近,世界の教育は爆発現象を一段と深めているといわれる。しかしまた一面において,国家間の望ましい協力が行なわれるようになり,国際的な教育関係事業が持たれて来ていることも注目に価する。

昭和39年に「国際数学教育調査」が実施されたが,数学教育に関し,学校制度・カリキュラム・指導法・教員・児童・生徒の環境条件等について参加各国の貴重な客観的資料が提供され,数学教育改善に大きな貢献をしたのである。

続いて去る45年には「国際理科教育調査」が実施された。この結果は本年中に整理・発表されることになっており,各方面から成果が期待されている。これらの調査は,「国際教育到達度研究会」略称IEAを中核とし世界各国の教育研究機関が参加して行なっているもので,このような調査が今後広く教育問題全般に亘って実施されることはじゅうぶん可能なことである。

また,昭和42年には,ユネスコから「教員の地位に関する勧告」が出されるなど,国家間の教育に関係する協定や協議がなされ,関連する資料の提出・整理・配付等望ましい国際的な事業が行なわれて来ている。なお,1970年は「国際教育年」として国連参加の諸国は,「教育開発の施策を樹立して,自国の開発と国際平和のために努力する。」ことを宣言し,社会の進展に即応する教育の推進・教員養成と現職教育制度の改善充実・教育研究の充実強化・教育工学の大幅な活用の推進・総合的な生涯教育の充実など12項目にわたる共通達成目標を提唱した。いずれも現在の教育を診断し評価する尺度あるいは進むべき方向や将来の姿を示す道しるべとなるものであるが,それらはまた教育センターの事業や運営の在り方に密接に関連するものでもあると考えるのである。

また,「70年代は教育の質を高める時代だ。」とも言われている。それを支えるものは基本的に教育研究・研修の推進と充実に在ることはいうまでもない。

杜会の急激な変貌と科学技術の驚異的な進歩の波による教育の現代化の必要,ならびに教師に対する専門職としての期待と要請とは,「教育研究の重視」「現職教育の改善充実」という世界の教育界の大勢と相俟って,研究・研修機関の整備充実の問題を緊急にして切実なものとしたのである。創刊号において述べたとおり,すでに全国70%に及ぶ府県において従来の教育研究所ないし理科教育センターが教育センターという組織・機構に統合・拡充されたのもこの要求に応えるものであり,ここ1,2年にしてほとんどすべての府県においてそうなるものと予測される状況にある。

本県教育センターも全国屈指の規模を以て昨年4月1日開所したのであるが,今日までに県内はいうまでもなく,県外から実に36都府県に及ぶ視察・見学があったことは,全国的な注目の的になっていることを物語っている。

なお,早急に渡リ廊下その他環境整備が完成し緑に囲まれた,研修・研究の場にふさわしい環境に1日も早くなるようにと念願しているので,よろしくご協カいただければ幸甚である。

発足以来多くの方々から寄せられたご助言ご支援ご協力に対し厚くお礼を申し上げると同時に,これまでの実施の検討・反省と各方面からいただいたご意見ご要望等によって,よりよい運営を期してまいる所存であるので,よろしくお願い申し上げる次第である。


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