福島県教育センター所報 第5号(S47/1972.3) -024/025page

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磐城高等学校
     鈴木 民郎

昨年10月,県教育センターで行なわれた高校国語科指導研修講座に参加した。期間は4泊5日で,数学,社会,国語の三教科から集まった約100名の教員が研修生である。

研修の趣旨は,「各教科の指導領域の専門的な内容について,研究を深め指導力を高めること」とある。

研修を命じられた時には,正直のところいい感じではなかった。朝9時から夕方5時まで講義と演習の連続。指定のテキスト持参とある。研修を終えた先輩に聞くとhardだぞという。さながら屠所の羊の思いで心は重かった。信夫山を抜け,リンゴ園を通り,正面に半田山,東に阿武隈川,そして,はるかに福島の中心街が見える教育センターは,まさしく「静かなるところ」で,とうてい研修なしには過ごせぬ,環境まことに絶佳のところである。

研修内容は専門教科に関する講義,演習と,教職に関する講義を骨子としたもので,かなり密度は高かった。

今回の研修では,全国でも有数といわれる,コンピューターを使ってプログラム学習を展開させる教育工学についての理論と,教育機器の機能,操作をまのあたりにして,研修生も大いに興味と関心を高めた次第である。

また,意外に関心が高く活発だったのは,学習指導上の問題点と指導法の改善についての研究協議の時間であった。日常の学習活動で当面している問題と貴重な実践例が出されて,宿舎に帰ってからもなお,意見の交換が行なわれた。

さて,宿舎はちょっとしたホテル並みで,清潔さ満点の申し分なし。食事は,カロリーは充分なのに,どうしてこうなのか。この種の場所で感ずる不充足感も―。夕食が何とも殺風景なのである。ノドをうるおすものがないのである。どうやら,わたしが研修を命じられた時のソクソクたる思いはこの辺にあったようである。ともあれ,所員の一人一人に新鮮の気と意欲が充ちていて,重かった心もほぐれ,最終日の食堂では,教科の垣根を超えて,誰彼の区別なく親しく話すことができた。

寝食を共にした者のみが知る,何ともいえない研修のすがすがしさが,共感となってあふれていた。



編集後記

「書誌学」と「文献学」との学問対象の明確なカテゴリーは,との問いがあり,調べてみますと,書誌学は「書物に関して書くこと」の意味を持ち,「書物の物体的形態を中心に科学的に研究する学問」であって,図書館学と交錯する学問分野をもっております。これは中国にも古くからあり,「清代の"考証学"などはその例」(JAPONICA)であるといわれております。

一方,文献学は狭義には古典テキストの批判的復元(本文批判)とその正確な解釈をいい,広義には大規模な古典古代学をいう。人類の社会的諸活動のいっさいの領域を,それぞれの文献的表出をてがかりとして解明し,これによって古典古代の生活と文化の全体像を描きだそうとする文化科学であり,「中国での"考証学"などがこれにあたる」(JAPONICA)

さて,いったい,どうなっているのでしようか。書誌学(bibliography)と文献学(philology)との学問領域と内容的体系は,もっと学問的に峻別されるべきではないでしようか。

さて,福島県教育センターも,昨年4月に発足以来,早や1ケ年が過ぎようとしております。旧理科教育センターからの移転業務,開所式,8月からの宿泊研修講座開始,落成式,情報棟へのコンピュータ設置稼動など全所員一丸となって,福島県教育の研究・研修のための一大殿堂造りのために,額に汗して歩んできたように思われます。

所報も年初計画とおり年5回発刊の最終号発行の運びとなりました。現場の先生方に「読みやすく,親しみやすい所報」との目標で所報を編んでまいりましたが,ああもしたい,こうもしたいことが多く,ただ頁数に限りがあるため,果たせないことが多く,先生方の意に満たなかった点も多かったことと思われます。嬉しく感じたことは,研究資料・図書・資料等についての所報記載の内容について現場からの反響や照会が数多く寄せられたことであります。

新年度は新しい構想のもとに,より内容の充実と向上を図り,先生方に愛される所報をお届けできますよう,編集委員一同努力していきたいと念願いたしております。

本年度所報に寄せられました先生方からの暖かいご支援と愛情に深く感謝いたしますとともに,相変らずのご鞭撻ご支援の程を今後ともお願い申しあげます。

(佐々木勝夫)


◇表紙題宇……… 所長  白岩 和夫
◇表紙写真……… 情報棟で稼動を開始したコンピュータ (FACOM230‐25)


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