福島県教育センター所報ふくしま No.7(S47/1972.8) -008/025page
突から出るけむりや自動車の排気ガスで空気はよごれ,道路には車がはんらんしっねに危険にさらされている日そんな状態の中で生活する子どもたちの身体活動の場は学校だけであるといっても過言ではないだろう。
しかし,今の子どもには遊べない子どもや体を使って遊んだり,汗を流して運動したりする子が少なくなったように思われる。これは私ひとりのみかただろうか。ある中学校の運動クラブ担当の教師にきいてみると,「今の子どもは全身を使い,魂をゆさぶるような激しい練習や運動をするのをあまり好まないようになった。」ともらしていた。これは都市の子どもだけでなく農村の子どもにも言えることである。それには子どもをとりまく色々な社会環境が考えられる。しかし,それは環境が悪いのだからといってかまわないでいてよいだろうか。その中で学習指導要領の総則の第3に「体育」の項が新設されたのは意義あることと思う。従来の学校教育の知育偏重の害をだれでも唱えながら,是正されなかったこれまでの教育をこの際ねり直すという,これは学校経営という観点に体育を位置づけて,総合的全体計画を学校でたてねばならないことを意味している。この趣旨を生かし子どもたちを遊びや運動に引きつけるには,教科の体育を魅力のある意義あるものにしなければならない。
そこで授業と評価について考えてみたいと思う。学習指導と評価とは切り離せない関係にある。それは学習指導には目的があり,その目的すなわちねらいをたしかめるのが評価といえよう。今までの評価は,児童・生徒の学習結果を評価することすなわち評価=評定と考えられ当然のこととして行なわれてきた。しかし,それがそれだげ標準化され,さらに指導計画や体育科の学習指導にその評価結果が生かされていたかというと必ずしもじゅう分ではたく,評価は,ただ機械的に相対評価が繰り返し実施されているという段階にとどまっていることはないであろうか。そのため子どもの意欲をそぎつまらない授業にしてはいないだろうか。本来子どもは身体活動を何よりもこのんで行なうものである。この子どもの欲求を満たし調和的発達を図るべく評価にも一考察が必要になるだろう。また,評価と評定をはっきり区別すべきであろう。
運動技能の評価は,指導者によってさまざまな方法でつねに行なわれているが,教科の体育における運動技能の評価の一観点について考えてみたい。
体育評価
(1) 体育評価について
評価とは,「何物かについて値踏みしてその程度を判定することといわれている。」体育評価は,体育の学習,指導など,およそ体育に関係する事象が持っている価値を,体育の目的,要求あるいは価値観に照らしてはかることであるといえる。
体育の評価には,体育学習の効果の測定を手がかりにして,指導計画,指導方法,カリキュラムの再編成などを検討するような教授に関する機能と,体力や運動能力によって組み分けするような管理的機能と,研究的機能の3つがあるといわれている。しかし,学校体育の評価は,教授に関する機能が重要視されることはいうまでもない。
(2) 体育評価の分析と手順
つぎに体育評価を分析してみよう。県保健体育課指導主事渡部誠一氏は評価とは「目標にてらして,どの程度せまったかを明らかにするとともに,最善の学習活動が展開され,学習の効果をいっそう高めていくには,なにを,どのように,どんな方法で指導すればよいかをさぐることといえるだろう」と述べている。
そこで考えられることは,体育評価では,まず「例を評価するか」が明確でなければならない直そこで考えられることは,いうまでもなく,それは体育の目標との関連において決まるわけであるが,「どのようにして(方法)評価するか」となれば,評価の目標が具体的に分折されていなけれぱならない。たとえば,運動能力を評価するにあたって,その測定項目を,走る能力は50メートル走で,とぶ能力は走り幅とびで,投げる能力はソフトボール投げで,懸重の能力は斜め懸垂腕屈伸で,持久的能力は1000メートル走ではかるというぐあいである。
また体育評価をいつ(機会),どのような場面でするかもじゅうぶん検討されていなければならない。このことも,評価の目的と関連して決められることであり,学習の前後はいうまでもなく・学習過程のどのような場面で何回行なうかを決めておく必要がある。
それから体育の評価には測定の用具が必要であり,その用具の使用に熟練していなければならない。
評価にはこのような手順があるだろう。
(3) 運動技能評価の考え方
体育の評価といえば,すぐに児童生徒の学習の結果の評価のことが頭に浮かんでくるであろう。しかし・ある目標を設定して,それに向かってどの程度努力したか,あるいはどの程度達成できたかをみるために評価が行なわれるのである。評価と評定とはちがうのである。
評価は,教育的効果を判定することであるから,前にあげた保健体育科の目標に対し,学習の結果がどれだけ到達し得たか,あるいは進歩し得たかを見る学習評価と,指導計画や指導法校どの学習評価をとりまく教育上の諾条件たどに反省を加える教育評価があるという考え方に立っている。したがって,目標との関連や教科としての特性などをじゅうぶんに検討し,的確な評価をしていくことがたいせつである。すなわち,
1 目標との関係を図リ,達成度や進歩度を見るようにする。
現在の評価方法では,例えぱ運動能力の測定をし