福島県教育センター所報ふくしま No.7(S47/1972.8) -018/025page
日本学生科学賞について
日本科学教育振興会主催の第15回日本学生科学賞の募集がおこなわれている。
中学・高校生の理科関係の研究物で,常日頃クラブ活動あるいは個人で研究を続けているものがあれば是非出品されるように期待している。
この学生科学賞は現在科学系では唯一の全国的規模で実施されており,福島県関係の入賞数もかなり多い。なお福島県審査は11月上旬におこなわれる予定である。
全国理科教育センター研究協議会について
各県の理科教育センター所員で構成されている研究協議会の10周年記念式典が新潟で行なわれた。
この組織は各県のセンター所員による研究発表と研究討議がおこなわれ所員の研修が主目的とされている。
このたび,化学関係で「新しい化学の実験と探究学習」や地学関係では「採究の過程を重視した地学数材の研究」の書籍が(¥1,000円)発刊され,探究の過程を重視する新カリキュラムの授業で利用がおおいに期待されている。(センターでもあつかっています。)
第3研修部 金沢義夫
いま頃なにごとだろうと思いながら電話にでると「実は貴センターに納めた機器のある部分だが,他に納めたところで調子がよくないことがわかった。しらべたところ当杜の設計ミスに原因がある。近いうちに取替えたいので都合はどうか。」というのである。
寺田寅彦の随筆に,製品に対するメーカの誠意のなさを嘆いた一文のあったことを想い出す。
たまたま来棟したコンピュータ・メーカの部長は「ハードのように,ソフトを輸出できるところまでもっていきたい。」という。
だが「コンピュータだけが授業ではない……」などと話し合いながら企業体の目標設定における管理体制に耳をかたむける。
NC工作機械の研修はメーカからの講師によって展開された。講師は時間を有効に使った。そして個人のミス修正に協力はするが,冷房よりも冷たい探求の姿勢をくずさない。ひまがあればセンターの図書をもち帰り,翌日はチエックした質問個所を所員にたずねる。
いやみのない,忘れられない人物に接しただけでも,研修になったという方炉いた。
教育のシステム化の共同研究集会に参加して
研究・相談部 津田俊晴
富山集会では「教育のシステム化とは何か」ということで意見がわかれ,共同研究としての集約がむずかしかったようである。しかし,参加者の個人的な話し合いのなかには,今後の研究の方向ともいえるものがあったので,これを三つにわけて以下に要約する。
(1) 研究のためには,システムの内容を狭義にとらえるのがよいのではないか。
(2) 教育の効果をうみだす諸要素はたえず変化しているので,教育に関するシステムの開発はななかむずかしい。しかし,やるか,やらないかという選択よりも,少なくとも測定できるものは測定し,そして選択可能な目標を設定して,この計画でやるか,あの計画でやるかという選択こそたいせつ狂のではないか。
(3) システムズ・アプローチするときは,自己の関心や経験などを基準にしたいで,論理的に可能なすべての場合を考察し,問題の全体像をは握するようにする。
そして,このような研究に役立つ手法と一応考えられるのが,システム工学の総合的な計画予算統制のシステム(P1anning-Programming and Budgeting System)であるといわれる。
性意識と行動のズレヘの一言
研究・相談部 金木和子
全教連の研究会が成田市で6月28日から3日間開催されましたが,その席上現在の子どもたちは,アベックやキスの場面をみてエッチという考えより,なんとも思わないとか楽しいという意見になっているし,現代っ子が情報化社会(テレビ,マスコミ,雑誌など)よりうける影響が大きいと性意識調査の集約報告がなされ考えさせられました。
性意識は,成長加速現象も加わってより高められていますが「手をつなぐ行動」については否定しているところをみると性意識と行動は必ずしも一致せず自己の行動におきかえると制約されたり,性差による能動と受容の場面がでたりするようです。47年度は前年度の質問紙を具体化した調査とインタビューによる追跡調査をすることになりましたが,「眠っている子を起こす」とご注意いただいた学校からは性の追調査となるとどんな反応がかえってくるだろうかと考えたりします。青少年の健全な育成のため適切な指導を痛切に思いながらおとなたちは,「危険なものにさわるな,ふれるな式」の考え方で対応するのではないかと懸念されます。それにつけても全教連の調査が今後の社会の見方,考え方の変容について大きな参考資料になることを期待しています。