福島県教育センター所報ふくしま No.8(S47/1972.10) -029/030page
編 集 後 記
所報第8号をお届けします。朝夕は,とみに肌寒くなり,教育研究・研修・実践等に目立った成果が期待される季節となってまいりました。
さて,社会未来学の教育の面での問題,トフラーの「未来の衝撃」(Future Shock)と,OECDの「リカレント・エデュケーション」(Recurrent Education)ー環流教育,回帰教育等と訳されてもいるが定着していないーについて,ー 未来の衝撃,いわゆる,われわれの未来社会には,われわれの予想し得ない変化が,継起的に起こり,人間があらゆる社会活動の面で,これらに適応できなくなり,いわゆる未来病に罹る。このようた予測される症状に診断を下し,その処方箋を作らなければならないが,トフラーは教育の面で次のような点を提起している。
1 学ぶ方法を学ぶ教育
2 未来への適応は連続的選択であるから価値観を定義づけ,価値観を持たせる教育
3 好奇心をうみだす教育未来の教育の使命をこのように考え,「未来の衝撃」を回避するためには,まず,未来社会における教育システムの創造からはじめなければならぬと説いている。
「リカレント・エデューケーション」についても,教育の未来像が示されているが,このアイデアは,教育期問を人生の早い時期に限定せず,人生の早期教育でなく「後期教育」を提唱している。たとえば人間はすべて生まれたときに16枚の「教育券」 (Education Ticket) を得るとし,人間の一生の教育として最低限16年間を無償で保障して,最初の10年位を,継続的義務教育として6歳位から行ない,残りの6年は,本人の好む時期ーすなわち,働きながら,あるいは労働を中断して,学校へ「環る」(リカレント)というようにーに選択できるようにするものである。このアイデアは,いわゆるユネスコの生涯教育 (Life Long Education) 理念の政策理論とも見られる。
いずれにしても,トフラーの提唱といい,リカレント・エデューケーションといい,いずれも未来社会で人間の被る未来病という疾患から,いかにして回避するかの処方箋であって,わたくしども教育の仕事に携わる者として,深く考えなければならない問題であると思われます。(S)