福島県教育センター所報ふくしま No.12(S48/1973.8) -014/025page
児童生徒の個性を考える
――授業における個性理解の方法――研究・相談部 星 正
1.学習指導要領における個性の概観
花は紅,柳は緑のたとえのように,人の個性はさまざまである。私どもは,教育実践の中において児童生徒の優れた能カを開発し,豊かな個性を伸張する事は,教育の目的につながる課題として考えてきた。いま,教育の転換期にあたり,この問題を再考してみたい。
昭和22年4月から現在まで,学習指導要領は,いく度も改正が重ねられてきた。特に新教育の体制は,昭和21年11月3日に公布された日本国憲法を初めとして,教育基本法や学校教育法などによって固められた。
(1) 最初の小中学校の学習指導要領の一般編は,試案であった。第1章の教育目標の4項目をはじめ,第2章以下の児童生活,教育課程の考え方など実に有意義である。
この内容を一覧すれば,教科と時間数,小学校における社会科と家庭科の新設,小学校4年よりの自由研究などがあり,中学校の選択科目は,地域の事情や生徒の要求により,時間数に弾力性を持たせるなど児童生徒の能カ・特性についての考慮がかなりはらわれていた。
(2) 昭和23年9月には,小学校社会科の補説を初め学習指導要領各教科編が刊行された。
(3) 昭和26年の学習指導要領一般編 (試案) には,児童の心身の発達を細かにとらえた教育目標が示されている。特に教育の一般目標には,個性について次のように記されている。「・・・ことにわが国の現状からして,個性の尊重や道徳的行為の問題はたいせつである。もともと集団生活を営んでいる個人は,すべて他人をもって代える事のできない個性の持主であって,この意味で個人は,自分の特性に誇りを持ち,自分の個性を最高に発揮するよう努カすべきである。しかしまた同時に他人の個性を尊重してお互いに協力し合って家庭や社会の健全な発展に努カすべきである。」また,教育課程の定義として,現在の社会目的に照らして児童生徒の可能性を最大限にまで発達させるために児童生徒に提供される環境であり手段であるとしているのも興味深いものがある。
(4) 昭和33年の学習指導要領ほ,同年8月28日学校教育法施行規則の一部改正により小学校・中学校の学習指導要領は,教育課程の「基準」として公示され,試案のわくがはずされた。
(5) 昭和40年6月教育課程の改善により審議会から次のような検討すべき問題として提示されているのは注目される。
1.人間形成の上で調和と統一のある教育課程の編成
2.時代の進展と児童生徒の発達段階に即応する教育内容
3.基本的事項の精選,指導内容の集約化・指導の徹底
4.個性,能力,特性,進路に適する教育
5.国語,社会,算数数学,理科,英語教育のあり方
6.各教科間の関連の緊密化
7.幼稚園より高等学校までの教育課程の関連
8.道徳,特別教育活動,学校行事のあり方,各教科
の授業時数の配当など。このような諸問題の検討が基盤となり今回の改正にまで発展した。
2.個性に対する見解
改訂中学校学習指導要領の展開その総則編の一部を引押してみると次のように記されている。
(1) 生徒の個性的な人間にまでの形成については,中学校の必修教科や教科外において,一般的な人間を形成し,これに選択教科及び教科外による個性的な人間の形成を加えるような形で僻性的な人間の形成をはかる考え方があること。
(2) 第2は,選択の教科及び教科外だけによって質的に異なる個性的な人間を形成するのでなく,必修の教科及び教科外も質的に異なる個性的な人間を形成するのに役立たせる考え,すなわち,ひとりひとりを育てるための教育課程を構成することが必要であるとしていること。
前者は,一般的な人間を主とし,個性的な人間を従とする考えであり,後者は,個性的荏人間は,一般的教育の中に含まれると考える。
一方,義務教育は,国民の義務として課される強制カのある教育であり,その内容は一般的陶冶をめざしてい