福島県教育センター所報ふくしま No.12(S48/1973.8) -015/025page
る。中学校の職業に関する教育でも,それは一般陶冶を求めているが,選択教科は,すべての生徒に同時数だけ課しているわけでもたい。義務教育期間においては,一般的な人閲の形成がおもなねらいであるとし,さらに教育基本法の人格に解釈の目標をおいている。その人格とほ,全体としての人間(全人的)であると共に,ユニークな個性的人間や主体的な人間と考えて,そのような人格にまで,高めていくのが教育の目的と考えている。
3.児童生徒の個性・能カ・特性について
普通学級には,個人の能カ・特性の異なる者が混在している。能力や学力などが多少低くとも,人がらの優れている子もおり,能力や学カが高くとも人がらに問題のある子どもも少なくない。このような子どもの可能性を伸ばすところに教育本来の仕事がある。山岡栄氏の見解によれば,人間は,その能力と性格からとらえる事ができ,能力には,二方面があって,生れながらの先天的な方面からとらえると適性という能カを意味し,生後の後天的な面にウエイトをおけば,学力という能力を指す。知能指数で表わされる知能は,適性の一種とみなされ,学校の指導要領などに記入されているようである。また,児童生徒の個性は,それぞれの子どもの能力や,性格の特性の全体によって形づくられているとしている。
奥田真丈氏は,新指導要領作成にあたり共通的理解として次のようにつたえている。能力は,ある行動を逐行し実際にできる事を意味する。また,現在は逐行してないが,現在以上の訓練を特に加える事たく,ある行為を逐行することができるであろうと予見される可能性も能力と呼ばれることが多いと言う。また,適性という用語は,将来において期待できるであろう能力に使っているとしている。
4.個性の伸張の場と機会
このような考えかたからみて,学校において児童生徒の個性を伸ばす有力な場と機会は,教室の内外を問わず授業中に多いのではないかと考えて,次の点に解決点を求めたい。
1.教師が指導計画によって展開する授業の充実
2.教師の進める授業の指導方法
3.児童の主体的な学習態度の養成
4.教師の計画的,組織的な児童生徒の観察指導
5.授業中における児童生徒への個別的指導の強化など。
5.授業の充実
各学校における指導計画は,教育課程の適正な実施に伴い,郡市においては綿密な指導計画案が作成されており,各校もその実情に応じた自校化プランが作成されつつある。これらの点に子どもの能力,特性を伸ばす方途を講ずる配慮がはらわれるべきであろう。
(1)授業の意味とその構成
授業は,その目標を達成するために教師の計画,展開,評価の一連の行為を統一的に含む案践のプロセスであり,授業は,つぎのような内容で構成されている。
5.教師は,授業に臨み自分で案をつくる力と習慣を養うべきである。周到な案をもってしても授業は,セオリーどおりには運ばない。授業案には,意図しなかった事が,授業中に起こる例も多い。教師は,児童の動きに即応する弾力的な手段を講ずべきである。
1.授業には,知識,理解,態度,技能,思考などを伸ばすための目標が鮮明に表現されること。
2.教材の内容をどんな方法によって指導するかなど,指導過程,指導技術を適切にもりこむこと。
3.学校としての授業に対する共通のねらいや,学級としての取り組み方などの姿勢が明瞭であること。
4.単元(教材)のねらいに対する評価,学級において児童生徒に対し,能力や特性の向上をねらいとする評価の観点などが設定されていることも必要である。これらを図示すれば次のようになる。
(2)授業の案施について
1.授業内容に精通する。
教師は,授業内容について基礎研究をし,科学の進歩に対しても正しい知識をは握しておくこと。
2.指導目標の具体性
指導のねらいは,具体的で学習者にも理解されていること。
3.教師の豊かな体験
教師の事前研究も含めて,豊かな体験が子どもの個性を伸ばす事は割合多い。地図に関する指導にしても,地図をたよリに実地を歩いた体験をもつ教師の指導にはぬかりがない。
4.学習における探究姿勢
○教師が,課題を求め,これを追求する姿勢をもつことは,学習者に対する影響はおおきい。
○学習者に教材について学習の筋道を知らせ,その見とおしをもつ習慣をつけること。