福島県教育センター所報ふくしま No.13(S48/1973.11) -001/026page

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鈴木 宏

巻 頭 言




第2研修部長   

        鈴 木   宏

理科教育の現代化ということが言われてから,すでに10年以上も経過しており,決して最近のことではない。本県においても,この教育革新の時代的要請に即応して,理科関係教員の研修機関として,理科教育センターが昭和40年設置され,昭和46年には発展的に解消して,教育セシターになり,教育の現代化,理科教育の現代化の推進のため,数多くの研修講座が実施されてきた。この間の理科関係の受講者数は昭和47年度末において,延べ小学校は2,819名,中学校は1,036名,高等学校は1,003名に達した。この数は,小学校教員の約3割,中学校教員の約2割,高等学校理科教員の約2.4倍にあたる。したがって,小学校教員は全教科担任のたてまえ上不明であるが,中学校,高等学校においては,理科担当教員のほとんどが一度は受講したことにはなるのではないかと思う。

文部省においても,各都道府県教委と共催で,昭和43年から5か年間,さらに今年度から5か年間,中学校,高等学校の理科教員を対象として,現代化推進のため,探求の過程を重視した理科指導のあり方を理解させ,それに即した指導法を研修させることを目的とした講座を開催している状況である。そのほか市町村教委等主催のもとでも,理科教育現代化講座を実施しているので,県内小中,高校をとおして理科担当教員は,この現代化精神,ならびに趣旨についての理解がかなり深化されているのではないかと思う。しかし現実にはどうかというと,たしかに意欲的に授業改善にとりくみ,それ相当の成果をあげているという声も聞くが,同時に科学の方法とか,探究学習という言葉のみが,もてはやされ実質が伴ってないということも聞かされるととである。そこで,学習指導要領が改訂され,小中学校ではすでに実施され,高等学校においても,ようやく今年度から実施されたので,思いを新たにするために,さらに,ここで理科教育の現代化が必要とされる背景と,実践に当たっての問題点等について考えてみたいと思う。

現今は周知のとおり情報化時代である。ここ10年に,これまでの情報量の約2倍も増加したといわれてる。これは自然科学界においても例外でない。したがて10年前の情報の中には,現在まったく,その本質さえ変わっているものもある。とすると,これからの教育は,現在社会に立派に適応する人間に育てることは勿論であるが,今後の社会の変ぼうに対しても対処できる柔軟性のある能力を持たせるようにしなければならない。そのためには,従来の詰め込み教育,または単なる暗記教育の知識の獲得に傾いた教育では,柔軟性,創造性を育てることは困難であるといわれている。それではいかにすればよいかというと,学校においては,基本的な科学概念を児童生徒に直接与えるのでなく,児童生徒自身が,探究の過程をとおして発見して,問題解決をはかる科学の方法を習得すれば,今後の社会の変化,自然科学の進歩発達に対しても,じゅう分対処できる能力が育成されるということである。改訂学習指導要領においても,理科指導の重点は,いうまでもまなく,探求の過程をとおして科学の方法を習得させることであると強調されている。

次いで,この学習の問題点は,なんといっても時間のかかることである。もともと探究学習は時間がかかるものであるが,この時間不足に対しては,教材をよく研究し,精選し,探求活動をスムーズに進行させるための周到な準備につきると思う。そして能力,適性の異なる児童生徒一人一人の個性を最大限に伸ばすよう努力するのが教師のつとめであり,学校教育の目的でもあることを銘記し,同時に探究学習の精神と合わせ考えれば,おのずから道がひらかれるのではないかと思う。

なお,指導法の形式にあまりとらわれすぎて,画一的な指導になり児童生徒を理科ぎらいにさせないよう配慮することが肝要である。


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