福島県教育センター所報ふくしま No.13(S48/1973.11) -002/026page
探究的に学習をすすめるための研究
中 学 校 教 材 社会科における探究学習のすすめ方
第1研修部 西谷地 金 成
今日の社会の変貌の激しさは驚くばかりである。情報化社会の進展に伴って,社会生活の様相は,さらに大きく変革されていくであろう。こうした時点において教育のあり方も旧来のままであってよいわけがない。社会科教育を知識の注入に終わらせず,主体的に社会を見たり考えたける子どもの育成をめざして,研究と実践に努めることが,新しい時代にふさわしい社会科教育のあり方ではなかろうか。
情報化社会に生きぬく子どもたちに対して,変動の激しい社会,唐報の氾濫する社会にあって,社会の本質を見きわめ,判断を誤まらない見識と,よりよい社会を創造していく能力とを身につけさせることが必要だといわれている。そのための一つの学習理論として,これからの社会科教育で重視しようと考えられるのは,「中心概念の形成」と「情報処理能力の育成」という,社会科探究学習の方法があげられている。
◎情報処理能力の育成と探究学習
探究学習は,まず何よりも,子どもたちの主体的な問題探究の過程を重視する。情報が質的に多元化し,量的に拡充していくこれからの社会にあって,拡大する情報を追いかけて,その内容をわからせるという教育をしていたのでは,いくら時間があっても足りはしない。それよりも,自己の問題解決の局面に即して必要な情報を集め,それを使うという「探究カ」の育成の方が,より教育的に重要ではなかろうか。
つぎに,探究学習は,発見学習とか,仮説検証学習とか,あるいは,主体的学習と一般によばれている学習方式と本質的にそれほどちがいはないが、それらの方式を情報処理能力の育成という点から再構成した方式であるといわれる。「探究」ということを強調することは,発見にせよ,検証にせよ,結局はさまざまなデータを収集し,それを批判的に分析し,それをつなぎあわせながら,問題の本質をねばり強く探究するということがなくてはなりたたないと考えられているからである。
それでは,探究学習は,具体的にどのようなシステムをもっているのであろうか。
第一段階は,問題設定の段階である。とりあげた研究テーマに関連して,どこに探究すべき問題があるかを確認しなくてはならない。問題設定というより,研究問題の設定というほうが,その本質をよくあらわしているといわれる.しかし,問題の設定には・情報が必要である。低学年であれば,子どもたちの経験の中にある情報が基盤となるかもしれないが,高学年になればなるほど,新しく情報を求め,それをもとにして研究問題が設定される。すなわち,とりあげた社会現象の本質の究明が可能な形で問題の設定はなされるべきである。
第二段階は,仮説の設定である。仮説をたてるということは,とりあげた研究問題の本質に対する子どもたちの事前の解釈である。したがって,単なる思いつきや感想や感じでは,仮説とはならない。「それはおそらく,こうなっているのではないか」,「こういうつながりがそこにはあるのではないか」,「そのちがいでいちばん大事なのは,この点ではないか」,というように,子どもなりの解釈が加わっていてはじめて・仮説の設定といえる。それに今一つの重要なことは,その仮説は,検証されなくてはならないものであるから,仮説をたてるということは,その仮説の検証方法がたてられる。つまり,どうしたらそれが証明できるか,ということについての見通しが,たてられなくてはならないはずである。
第三段階は,検証の段階である。検証は,仮説を証明するために,必要な情報を集めることから出発する。そして,集めた情報を分析し,その中にどういうデータ,つまり事実がかくされているかをとりだすことが,その次に行なわれる。その次の段階は,とりだした事実と事実との間にどういうつながり,関連があるかを組み立てることが行なわれる。検証は、この過程のくり返しであり,このくり返しを通じて,次第に,仮説の証明が行われているといわれている。
第四段階は,結論吟醸の段階である。検証を通じてとりだした「吟味」,それがどういう限界をもっていか,どういう背景のもとに成り立つものであるかを明かにすることが,結論の吟味である。探究学習で必要まとめとは,検証を通じて明らかにした結論は,どんな