福島県教育センター所報ふくしま No.17(S49/1974.9) -022/026page
図書コーナー
性文化における社会認識
(全国教育研究所連盟編)
研究・相談部 金 木 和 子
1.研究のねらい
社会認識研究の分科会として性文化の問題をとりあげた。社会集団における個人の意識と働きかけを研究するという考え方を基盤としている。その結果,性文化を子どもをとりまく情報としてとらえ,その受けとめ方,見ぬき方,社会の規範,異性間の人間関係のあり方を追求するものとした。
2.研究の方法
全国的に共通調査を立案,実施したこと(昭和46〜47年)更に各機関ごとに質問調査を行ない問題点をとらえ一部に面接調査を加味した。
3.結果の概要
全国調査の傾向に基づく「性・男女の人間関係について」14県が実施・小6,(5526名2935名,中2,(6367名3828名,高2,(4618名3019名の集計結果をまとめてのせてある。(※上段46年,下段47年調査人員)
1 地域差
調査の結果,児童・生徒の性意蔵は相当急速に変化しつつあると考えられ,情報伝達機構の発達,特に性の商業化の影響は全国的なものであるから地域差はみられない。一部に男女交際の行動に地域社会の制約がある。
2 男女差
同じような性文化のもとで育っても男女の性差は認められる。男子は開放的,積極的であるのに対し,女子は閉鎖的,消極的傾向であるが,問題は次第にその差が減少しつつある実態をのべてある。
3 発達段階による差
小6から高2までの思春前期,中期,後期の代表的年齢層を抽出し,心身両面にわたる変化と発達段階による差をあげてある。たとえば″マスコミの性表現,性の知識源,服装倒錯的現代のユースカルチァーについて,性の悩みの相談相手,男女交際の限界など″を示し,全体的にみた 指導上の問題点を 究明してある。
執筆分担は,A「社会のきまりと性」(熊本,長崎,鹿児島)B「異性関係」(大阪,茨城,徳島)C「マスコミの中の性」(千葉,宮城,福島)である。
最新版A5版,160P,¥1,600,発売元 東洋館出版社で11月末出版の予定である。
子どもの人物画
その心理学的評価
研究・相談部 佐 藤 守 男
児童名J.M 年齢7才2カ月
知能,水準より下学業成績下
問題−情緒,傾斜像,過小像
口の欠如,鼻の欠如
”この紙に人間1人を全部描いてください。どんな人を描いてもいいです。ただ,ていねいに描いてください。漫画のようになってはいけません”……この教示と,1枚の画用紙−25cm×22cmがあれば,精神薄弱児や脳損傷児,さらには情緒障害の選別を,かなりの精度でおこなうことができます。
HFD (Human FigureDrawing Test−人物画テスト)は,いままでの知能テスト・オンリーの選別から一段深めて,知能テストでは判別のできない情緒面の障害の有無,脳損傷の有無,家族に対する子どもの態度などをさぐり出し,診断を下すために,極めて有効なテストであるといえます。したがって,特殊学級入級児判別のためには不可欠のテストであるばかりか,普通児を対象にこれを実施して,知的能力がすぐれているにもかかわらず,満足すべき学業の進歩が計れない子どもの原因の追求に利用していくこともできます。
人物画テストの信頼度はかなり高いといわれていますが,ベンダー・ゲシタルト・テストと組み合せで実施すれば,ほとんど100パーセント近くのスクリーニングが可能となり,より適切な選別が可能となることが数多くの研究から立証されています。
採点の方法は,採点票上に記載されている指標にしたがって,簡単に集計されるように工夫されているので,慣れれば,テストを実施しながら採点することも可能です。口がきけない子どもにも,耳が聞こえない子どもにも,さらに年齢の低い子どもに対しても,絵が描けさえすれば(へたでもよい)このテストは実施することができるという点も見逃すわけにはいきません。
あなたの学校の,あなたのクラスの子どもたちに,より適切な教育を与えるために,一度はこの人物画テストをおこなってみてはいかがですか。
E.M.Koppitz 著 建白社 B5版 372頁
古賀行義監修 3,000円