福島県教育センター所報ふくしま　No.18（S49/1974.11） -024/025page

診断的性格を帯びた福島県標準学力検査の問題についてお知らせ

研究・相談部長 星 正

1． 問題作成のあらすじ

福島県教育センターでは,この程,中学校を対象とした標準学力検査問題を作成しました。これは,診断的性格を帯びた本県の標準学力検査問題であり,多くの学校において活用されはじめています。
内容は,中学校の1年と2年を対象として,国語,杜会,数学,理科,英語の5教科です。したがって,1年生の問題も2年や3年において活用いただいても有効です。
教育センターとしましては,県内における各学校のご協力をいただきながら生徒の現有学力の実態をは握して研究機関としての役割を果たしながら,一方自校の学力を診断しつつ,県内の水準で自校の学力の位置づけを考えてみようと希望する学校に対しても是非おすすめしたいと思います。

2． おもな特色

(1) 中学校においては,学習指導要領が改訂されたのでその趣旨にそい,教科書等の分析の結果に基づきながらテスト問題を作成したこと。
(2) ねらいを的確にし,測定しようとする要因を正しくは握できるように問題の構成を吟味してその妥当性に配慮したこと。
(3) 総合的な判定だけでなく,その結果を分析的にみることができ,指導上留意すべき点などを明らかにするための診断性を考慮したこと。
(4) 問題を領域ごとに作成し,領域別に標準化しようとしているので,個人内差異を偏差値の比較によって見ることができるようにしたこと。
(5) 学習指導要領を分析して問題を構成しているために,生徒の到達点をとらえる事ができ,成績不振の原因が,どの学習内容にあるかが指摘できるものであることなど。
これらを特色づけて作成した標準学力テストは,本県の実情に即した問題です。また,診断的性格を持たせたために問題の分量は多いですが,その測定値の信頼度は高いものと考えております。
上記のことがらをご賢薬いただき,貴校におかれましてもご活用いただければ,まことに幸いに存じます。

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あとがき

所報No．18をお届けします。秋色深まり,教育研究・研修,実践活動に身が入る時節になってきました。先生方におかれては一段とご精進のことと拝察いたします。さて,いわゆる教職の専門性が云々されているが,中教審答申,教養審の建議,ユネスコの「教員の地位に関する勧告」はいずれも教職は専門職たるべきものとし,それには高い専門性と職業倫理を具備しなくてはならないことを指摘している。
専門'性とは,(ア)教育理念・方法および人間の成長発達についての深い理解,(イ)教科の内容に関する専門的学識．(ウ)教育技術と実践的指導力などであり,職業倫理とは,(ア)教育者としての使命感,(イ)深い教育的愛情,(ウ)生徒の教育および福祉についての責任感などであり,教職が総合的能力を要求するものだとされていることである。
専門職の原語である「プロフェッション」が,「専門職」と訳されたことから,とかく専門的技術・技能を有する職業という側面だけがクローズ・アップされがちだが,プロフェッションとは単なるスペシャリスト(専門家)とか,エキスパート(熟達者)のことではない。専門職と非専門職とを区別する基準は,必ずしも技能の優劣や熟練の有無だけではない。専門職以上に特殊な技能や永年の熟練を要する仕事は沢山ある。また専門職の職務内容はあまり広範で漠然としていてはいけないが,あまりに狭隘で詳細に規定されているのも不適当なのである。
たとえば法曹と司法書記官,医師とエックス線技師等を比較してみれば判然としよう。一般に準専門職の方が特殊な職務領域に限定されているといってよい。殊に教職の場合には,さらに総合的な知見と洗練された教養が要求され,リベラルアーツの素養こそ教職の専門的資質の核心と考えられるべきだとする学説もある。従って幅広い知的・文化的一般教養の基礎の上に高度の専門性を身につけなければなるまい。教養審の建議が「広い一般的教養」といい,中教審答申が「総合的な能力」といっているのも,その意味に解することができよう。(文部時報'73第1156号,教職の専門性一市川昭午より要約)
ところでその専門職性の特質については,筆者の経験では,身体の或る個所に苦痛があり,医師の診断では異状ないといわれ,ではどうして痛みを感ずるのかと問うたところ,異状はないので苦痛はあるはずがないとの答えであった。教育もまた人間の営むものであるから,完全無欠というわけにはいかないだろうが,専門職性の権威を振りかざすあまり,独善と偏狭と威風にのみ終始するようなことがあれば,問題があろう。すべての専門職に要求されるのと同じく,教職に携わるものは,高い識見と倫理のほかに,謙虚さと暖かい人間性なくしては,その専門職性なるものは画餅に似たものとなろう。銘記すべきことではなかろうか。(K)