福島県教育センター所報ふくしま No.24(S50/1975.12) -025/026page
クエスチヨン・アン ド・アンサー (教育用語解説)
<オープンエンド>
理科の学習で,実験や観察などの結果を検討して解釈する場合,それから得られる結論がただ1つとは限らず結論をきめかねることがある。このような場合これをオープンエンドであるという。これは,探究的に学習を進める場合には,推論の過程において,事実と矛盾しない限り,できるだけ多くの考え方を導き出すことが大切なので,しばしば用いられる。たとえば,北の空の星が北極星を中心にまわっているという観察事実からは,「地球が自転している」と考えてもよいし,「星空が回転している」と考えてもよいわけで,この2つの推論は,この段階ではまったく同じ価値をもつものである。ところが,従来の指導法に馴れてきた者にとっては,無理をしても1つの結論を導き出さないと,何か不安を感じるようなことが多いようである。しかし,探究学習では,現在の自然科学そのものが末完成でオープンエンド的なものであり,今後も,さらに発展していくものであるというとらえ方をするので,こうした考え方に馴れることが必要でなろう。
もちろん,実験,観察が失敗して目的が達せられなかったときのかくれみのであったり,よくわからないところを避けて通るための用語でないことはいうまでもない。
<パーフオーマンステスト>
探究する能カがどれだけ身についたかを評価しようとするとき,従来行なわれてきたベーパーテストでは,おのずから限界がある。そこで登場したのがパーフオーマンステストである。パーフォーマンス(Performance)とは,遂行,成就などの意味をもつので,パーフォーマンステストとは,ある1つの学習が終わったとき,その学習がどれだけ遂行,成就したかをみるテストということになろう。しかし,―般には,もう少し狭義に考えて実地テスト,実技テストと呼ばれるものを指すことが多い。たとえば,上ざらてんびんや顕微鏡の操作を実際にやらせて,正しく操作できるかどうかをテストするとすれば,これはパーフオーマンステストである。また,探究学習では,これらの器具の操作ができることだけがねらいでなく,これらの操作を通して何ができるようになったかがより重要なので,電流計,電圧計,電池,導線などを与えて実際に配線して測定させ,電圧と電流の関係を導きださせたり,未知試料を与えて,その中のイオンを検出させたりしながら,測定値の求め方,グラフ化のしかた,推論のしかた,規則性の導き方等を評価することもパーフオーマンステストである。なお,パーフォーマンステストの実施については,問題点も多く,今後の現場での実践的な研究に期待される面が多い。
<質問>
教育相談関係の本や,臨床心理学の本を読むと,オぺラントとかオぺラント行動などの言葉がよく出てきます。どんな意味ですか。
<答>
オぺラント行動(operantbehavioO とは,アメリカの心理学者スキナーが命名した言葉で, オぺラントは「操作」を意味してます。
―口でいえば,特定の刺激には依存しない自発的行動のことです。こういっても,なかなか分かりにくいと思いますので,パプロフがおこなった古典的条件づけと,スキナーのオぺラント条件づけを図示し,対比させながら説明してみます。
(パブロフの古典的条件づけ)
上の図を見てわかるように,古典的条件づけでは,唾液反応を必ず起こす餌=条件刺激が必要ですが,スキナーの条件づけでは,それがありません。ネズミやハトをいろいろなスキナー箱に入れ,偶然ある行動(たとえぱバーを押すとか,くちばしである点をつつくこと)などが起ったときに,餌が出てきてその行為が強化されていきます。このような,はじめは偶然であっても,ネズミやハトが自発的におこなった行動=なんらの無条件刺激によってひき出されたものでない行動をオぺラント行動といいます。
あ と が き
本年を反省し,次年の生活設計をする師走,お互いより向上するよう思索をめぐらし,新年を迎えたいものです。