福島県教育センター所報ふくしま No.28(S51/1976.10) -001/026page

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第2研修部長 土 田 直 枝

 

巻  頭  言

第2研修部長 土 田 直 枝


 当センターには,年間延2500人程の高校生がコンピュータ実習にやってくる。

 これらの生徒の大部分は,工業科の電気・電子系及び商業科の生徒で,多少の差はあるがコンピュータについて学習中である。

 しかし,センターにくるについては不安をかくしきれず,ある者は,「今日一日遠足のつもりでゆくんだ」とか,「学校でしぼられてるよりはせいせいする」とか,ワイワイ騒いで気をまぎらわせながらやってくる。

 開講式で所員から「ここのコンピュータは1億5000万円のものである。この装置の部品一つをとってみても,またプロセスの一つ一つにも科学技術の粋を結集してつくられている。ただし,人間が使うためにつくらたものであることをよく頭にきざみこんでおきなさい。

 ここでは,コンピュータを体で覚えることだ。あと2時間もすればコンピュータも君達の言うことを開いてくれるはずだ。ただし,これからの私の説明をよく聞いて実行すればのことだ。」といったような話がある。

 生徒の顔からは不安の色の代りにファイトに燃えた意気ごみが見られるようになる。

 そこで講義30分,実習90分といったペースの学習に入る。

 こうしてトイレに行く時間も,昼食をとる時間も惜しんで熱中している学習が展開される。

 コンピュータはプログラムの誤りやせん孔ミスは指摘するので,そのつどやり直しをさせられる。

 誰も必要以上のことは教えないので,自分で4回,5回とやり直しているうちに無事通過する。

 その時の成功感,満足感にみちた顔はすばらしい。多くの生徒が,時間がほしかった,またきたい。と言う。

 明治33年公布「小学校教則大綱」改定文に「理科は,通常の天然物及び自然の現象に関する 知識の一班を得しめ (中略)兼ねて観察を精密にし(後略)」という知識重視の理科教育をうちたて東条内閣時代の「科学する心」まで続いた。

 戦後,生活単元,問題解決学習に始り,観察・実験学習が推進され,今日,探究を志向する学習に至っている。

 しかし,長年続いてきた知識偏重型は根強く内在して子供達から理科嫌いをつくっている。

 国際理科教育調査における日本編の統計の中に

  小学5年 中学3年
理科は他教科より好き 40.3 20.6
 =@ =@と同じ位 47.6 43.4
 =@ =@より嫌い 11.9 36.6

とある。

 別な項目をみると,理科学習の目標到達に大きな相関を示す要因のうち

 1 理科がどの程度好きか。

 2 生徒による観察・実験のやり方(中3のみ調査)

 3 生徒の自主的経験重視の度合。

の3つが目立っている。

 ここで眼を転じて大工さんの仕事を見ても,板前さんの仕事にしても,人工衛星をとばす仕事でもまず目標をきちんときめ,仕事のフローシートを作り,材料を吟味して集め,道具を整備して……と言う段階までには7分の力をかけるという。

 教育の道においてこそこの段階の仕事が重要なのではなかろうか。

 言うは易く行なうは難しと言われるが,良い仕事をするときの必要条件であることをふまえて努力してゆきたいものである。


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