福島県教育センター所報ふくしま No.28(S51/1976.10) -002/026page
<小・中・高校教材>
木 材 工 芸「積 層」
第1研修部 大 谷 英 輔
はじめに
工芸は単なる材料経験や技術習得のための学習でなく,当然デザイン活動が含まれたものである。ともすると工芸におけるデザイン活動はおろそかになり,デザインが遊離して,技術・技巧に走る傾向がみられ,表面への飾りつけや仕上げの処理に重点が移っていくことがある。
工芸のデザインは使用上の条件(いつ,どこで,なにに使うか)と,製作上の条件(機能,材料,構造,技術,形体,コスト)を考え,学習を通して発想から表示までのデザインの「般的プロセスを理解し,デザインから製作まで一斉した方法で行われ,工芸による創造の喜びをみつけていくようにさせたい。
積 層
木で作る課題のための最も簡単な原形は,ごく普通の丸木,塊状材から取りあげることにある。しかし作るための塊状材は乾いていなければならないし,塊状材のもつ性質,特徴を理解しなければならない。
今日,何十人かの児童・生徒に同一条件の必要十分な素材を与えることは入手方法,単価の点などから困難になりつつある。そのようなとき,立体の形状を得る一つの方法としては板材の層を何故も重ねて接着剤ではり合わせる方法がある。これには加工材(ベニヤ合板)から厚板まで種々の厚さの板材を使うことができる。更にデザインのもう一つの要素としてはさまざまな板材を使うための色が加わることであり,板材の厚さと種類だけでも無数の変化が生れるということである。
ここでは市場に多く出まわり入手方法の比較的楽な加工材(ベニヤ合板,厚さ4ミリから12ミリと多種)による積層をとりあげてみたい。
「ベニヤ合板を使って積層による器物を作る」
○ 学習のねらい
加工材(ベニヤ合板)をもとに使う工芸品の製作実習を通して構想と製作,材料と技法,行為と道具の関係を知らせ,創造表現への喜びを体験させる。
○ 指導目標
1.彫刻形状と同様に中空形をも層に組み立てることの方法を知る(発想の転換)。
2.保持するしくみを形体発想の基本的要素にして,材料の造形性や技術との関係のなかで構想をまとめるすじみちを理解させる。
3.自分の手で,身近な生活に役だつ物を作る喜びを味わわせる。
・ベニヤ合板の枚数(一応の目安として)
○ 学習の展開(ベニヤ合板3枚の例)
1.デザインをする。
あまり複雑な形を作らないこと(特に内側をやすりで形を整えるときに作業に困難を伴う)。
正面図,平面図などを書いて全体の形をたしかめる。
2.型紙を作る。
ベニヤ合板を積みあげる枚数分,型紙も必要となる。ベニヤ合板の厚さ(4ミリから12ミリ)により高さも変ってくる。