福島県教育センター所報ふくしま No.28(S51/1976.10) -005/026page

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フェライト式サーモスタットとその試作

−電気炊飯器を例にして−

第2研修部 押 山 峯 雄

 1.はじめに

 電気領域の電熱器関係の教材は,男子向きでは2年生で,女子向きでは3年生で,それぞれ取り扱うことになっている。本県使用の教科書をみると,サーモスタットについては,電気アイロンを例にとり,自動温度調節用としてのパイメタルのしくみと作用,回路の断続による温度変化などを中心に扱っている。電気こたつ,電気あんかなどの電熱器関係のサーモスタットは,このバイメタルを利用したものが多い。しかし,電気炊飯器のパイメタルは,その作用によって,リレースイッチやスイッチと連動して回路を開くようになっている。つまり,臨度調節というより,飯がたきあがったら,回路を切断するという働きをなしている。

 電気炊飯器には,直接加熱式と間接加熱式とがあるが,前者はパイメタル式だけでなく,器種によって,フェライトのキューリ一点を利用した,フェライト式サーモスタットがある。この方式は,熱サイクルによる劣化やスイッチの連動機構上に故障が少なく,長寿命の安定度が得られるというよい点をもっている。

 そこで,指導の時間的余裕があれば,電気アイロンの外に,直接加熱式の炊飯器を取りあげてみるのも,学習の発展拡充を期す意味から,大切なことであると考えられる。この種のフェライト式サーモスタットは,意外に取り扱われていないのが現状であろう。

 教材研究の深化と電気領域の指導目標を,より一層充実したものとして,生徒に到達させるために,標題にかかげたものを試作してみた。参考になれば幸いである。

 2.フェライト磁石とその強さ

 子どもの玩具として,あるいは,鉄板黒板に資料など貼付するとき使用する,黒い円形をした磁石がフェライト磁石である(以下磁石という)。形や大きさは,いろいろあるがふつう円形をしたものが多い。いま,同一の大きさと厚さ(直径20,厚さ3.5mm位)と思われるもの,10箇とりだし,その強さを測定してみたら,0.012〜0.013WB/uであった。この程度の差は,サーモスタット用磁石として,教具を製作する場合は,どれを使ってもよいことになる。次に,温度と強さとの関係であるが,グラフ−1は,任意の磁石(直径20,厚さ3.5mm,強さ0.012WB/u)1箇とりだし,ビーカー内壁に固定して菜種油150ml位を入れ,加熱して,水銀温度計(150℃以上のもの)と磁束計を使って測定した結果である。このグラフが示すように,温度の上昇にともない,若干不規則ではあるが,磁石の強さは,逓減していることがわかる。フェライト式サーモスタットは,この温度上昇にともなう強さの逓減と下降による強さの回復という性質を利用し,電気回路の開閉をしくんだものである。

グラフ−1 グラフ−1

 ※なお,磁石の強さは磁束密度で示した。

 3.炊飯器の温度変化としくみ

 市販品の作動時の温度変化は,その日の気圧や器種の構造によって若干異るが,一例を示すと,グラフ−2のようになっている。

グラフ−2 グラフ−2

 鍋中は,約90〜95℃に達すると,それ以上温度は上昇しない。水が沸点に達しているからであり,B−C間で蒸発を続ける。一方,熱板の温度も,余り上昇しないのは,鍋自身の放熱と気化熱によって,熱がうばわれているからである。蒸発が終ると(C点),熱板は次第に温度が上昇してD点に達する。鍋底に吸着していた磁石は,強さを弱め,ばねの力に対抗できず下方に落下する。

 次に,そのしくみの概要であるが,押しボタンを押すと,磁石はばねのカに抗して鍋底に吸着し,スイッチがONになり,回路に電流が流れる。これは,磁石を保持する金具と連動している機構上にスイッチがしくまれているからである。飯がたけてD点になると磁石は落下するから,自動的にスイッチはOFFになる。


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