福島県教育センター所報ふくしま No.30(S52/1977.2) -005/025page

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学習指導と教材研究

英語学習における「書く」指導の展開

第1研修部 鈴 木   均

はじめに

 英語学習における「開く,話す」指導の展開に関しては,本報第2号と7号において,また「読む」指導の展開については第15号において,それぞれ所見を述べたつもりである。そこで,今回は英語学習における「書く」指導の展開について考えてみたい。

1.「書く」指導と「聞く・話す」・「読む」指導との関連

 一般に,英語学習においては,文字を媒介とする読み,書きの指導は,音声を媒介とする開く・話すの指導がなされた後に行われる。このことは,今日の英語学習が,language is primarily speech.(言語の本質は音声である。)という言語理論にもとづいていることをうかがわせると同時に,実際の指導にさいして,音声を与えずに文字だけを教えることは不可能なくらいに難しく,時には不自然に感ずることをわれわれ教師はよく知っているからである。

 本来,英語の四技能(聞く・話す・読む・書く)の相互の関係は,並列的なものではなく,むしろ段階的なものであり,書く能力というものは,聞く・話すおよび読むの三つの能力が集約されて表れるやや高度なものなのである。したがって書くことの学習活動は生徒にとっては,最も抵抗の大きい領域であることをまずじゅうぶん認識して指導にあたることが肝要である。

 また,書く活動は,聞く・話す・読むという過程によって得たものを,整理・確認し,英語のカをより確実なものにするためにも欠かせない活動である。英語の四技能はそれぞれ単独に養われるべきものではなく,相互に密接に関連しあってろちかわれるべき理由がここにある。特に,英語を学習する基礎の段階においては,聞いたり,話したり,読んだり,書いたりすることのうち,いづれかの面にのみ重点をおいて指導することは望ましいことではない。四技能の調和のとれた養成こそが,将来さらに進んだ学習を行う場合にも,その確実な土台となるのである。

 ここで注意しておきたいことは,書く指導は必ずしも聞く・話す・読むという三つの過程に先行されておこなわれるとは限らないことである。たとえば,文を書かせる場合,口頭練習によって暗唱させてから書かせることが必要であるが,同時に,ある度程の予備知認を与えておいて,自分で考えながら英文でつづらせるという学習活動も必要である.また,ある文の生成過程を説明するような場合は,口頭のみで行うよりも,それを視覚化し,時としては,文字以外の視覚的記号をもあわせて使ったほうが,いっそう効果的なこともある。

 さらに,書くことの内容には,聞く・話すことには直接関係のないものもある。たとえば,アルファベットの書き方,単語のつづり方,大文字と小文字の使い方,句読点の使い方などである。もちろん,これらのものでも,聞く・話すことと全然無関係であるとはいえない。たとえば,アルファベットの一つ一つの文字はある音価をもち,単語の発音とつづり字の間にもある程度の規則性があり,また抑揚や休止が句読点と密接な関係をもつなどである。しかし,これらの音声的なものと表記的(no‐tational)なものとの関係は,少なくとも英語においては,直接的に完全な対応をなしているとはいえない。ここに書くことの指導に独自の領域が生まれるわけでもある。

2.「書く」指導の目標

 「書く」ということは,−般にどのような作業活動なのであろうか。P.0.Dには次のように定義されている。

 Write:<1> to mark paper or other material with the symbols by which spech is represented to the eye;<2> to set down(letter,word,sentence,etc.)thus,fill(paper,etc.)with or excute(docu‐ment)in writing;<3> to compose to be written,especially for publication

 すなわち,P.0.Dによれば,書くという活動は,<1> 話されたことがらを視覚にうったえて,なにか記号を用いて書き表わすことであり,実際には,<2> 文字や語や文を書くことであり,さらに進んだ活動としては,<3> 自分の考えていることがらを文学的な形式にまで高めて作文をすることである。

 この定義を英語学習の「書く」という活動に照らして考えた場合,<1> の活動は英語学習における表記法(no-tation)の活動に属するものである。すなわち書き手に


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